戦略はあるのか
−大学間協定の課題−

文・写真 松岡 俊二(Matsuoka, Shunji)
大学院国際協力研究科開発科学専攻・開発計画講座助教授



はじめに

 筆者はこの間、中国・上海の復旦大学との国際学術シンポジウム*に関わり、また昨年九月から十一月にかけマレーシア・マラヤ大学の客員教授の職務を遂行した。復旦大学、マラヤ大学ともに、広島大学が大学間協定を結んでいる大学である。小論は、筆者の協定校との以上のような経験から、大学間協定の問題点や課題について考える。


協定の休眠化現象
 最初に指摘したい問題点は、いわゆる協定の休眠化現象である。協定は両校のキーパーソン、キーグループ間の交流をベースに締結されるが、人が替わると、ほとんど交流が行われないといったケースがみられる。我々が交流再開するまでの復旦大学との関係は休眠状態であった。人に頼った交流は長続きせず、組織的対応が必要とされる。
 しかし、現状は、我々広大のスタッフ自身がどこが協定校かも知らないし(広大ホームページにもその種の情報はない)、知っていたところでほとんどメリットはない。広島大学と協定校の双方にとって有益な制度、例えば交換教授や交換学生(短期留学制度が出来たが、現状は圧倒的な入超)の実効化が重要であろう。
 そのためには国際交流基金、学術振興会、国際教育協会などの外部資源活用にも工夫の余地が大いにある。また、協定校でありながらお互いのことをあまりにも知らない状況を変えるため、積極的な広報、恒常的な情報交換が重要である。そのためにも、英文年報(現行Hiroshima University Bulletinは資料価値はあるが、広報価値は低い)、英文紀要などの発行は最低条件であるし、お互いのホームページのリンクなどはすぐにでも可能なことであろう。同時に、事務組織も国際交流の専門能力を飛躍的に強化することが必須である。


松岡 ヤマラヤ大学日本研究プラグラム4年生とともに。中央筆者(1996.11.2)




明確な指針の必要性
 次に指摘したいのは、明確な指針に基づく協定校の選定である。
 従来ともすれば、その国の有名校だから、あるいは、たまたま誰かが交流しているからといった理由で協定が締結されてきた経緯がある。例えば、マレーシアで最初の協定校がマラヤ大であったことに、我々の国際交流の限界を感じる。筆者のマラヤ大学客員教授としての経験からは、マラヤ大学は有名校ではあるが良い大学ではない。バンギのUKMやペナンのUSMの方がよほど学生教育に熱心であり、広大の学生を送るにUKM やUSMの方が良いのである。
 いずれにしろ、問われているのは我々自身の国際化への姿勢であり、広島大学としての国際化戦略であろう。はたして、我々は世界にうって出るにたる戦略を持っているのであろうか。


*以上の経緯については、松岡俊二「3回目を迎えた上海・復旦大学との国際シンポジウム」『広大フォーラム』N0333、一九九七年二月十三日を参照されたい。




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