広大ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー(VBL)の
大学院生活動

文・写真 松門 宏治 (Matsukado, Koji)
VBL院生委員長(理学研究科・博士課程後期)



1. 広大VBLの院生委員会とは

 広大VBLの目的は、平成九年度版広大VBLパンフレットによると『世界に誇る独創的な研究・開発と、研究科の枠を超えた挑戦的な教育活動とを思い切って展開することにより、大学院学生を次世代の科学・技術を担える創造的で強靭じんな人材に育て上げる』ことだそうです。
 ということで、平成八年度では、院生対象にVBLが募集したVBL研究計画募集(VBLの台所事情に応じて研究費が出ます)に応募・採択された七件のテーマのグループ代表からなる院生委員会が発足しました。VBLの院生になると、院生主体の企画の立案・運営ができます(VBL内に部屋と机もあります)。ここでは、我々の存在及び活動を知ってもらうために、今年三月に開催した「VBL院生研究会の顛末」を主に紹介します。

写真1 写真1.月1〜2回のペースで行われるVBL院生ミーティングの様子。この日は、3月4日の研究会の反省会などが行われた。










2. 企画・実行、そして反省

 VBLの院生になったからには、そのメリットを最大限に生かしたい……。では、そのメリットとは何か。いろいろ考えられるでしょうが「分野を超えた研究ができる」というのがまずあげられるでしょう。しかし、VBLに所属したからといって、すぐさま分野を超えた研究(何だそれは…)ができる訳もなくて、やはり、私たち大学院生がめいめいに自覚をもって、VBLが提供するチャンスを掴んでいくしかないのです。
 そこで、第一回VBL院生研究会のお題は、そのチャンスを逃さないための「広い視野を持とう!」とすることにしました。具体的には、分野も専門も違う寄せ集めのVBL院生がめいめいのテーマを自由に話し、討論しあうことで何かを見出していこうということです。また、この研究会は、VBL院生研究の成果報告会をもかねることになりました。
 研究会の発表者をVBL院生委員に加えて、院生の有志と言うことで募集したところ、七名の院生委員と二名のVBL機器使用者から申込みがありました。プログラムを見ても分かるように、本当に分野がばらばらの、世にも恐ろしい研究会ができあがりました(世話人兼座長の私としては、背筋が凍る思いでした)。
 そして当日。理・工・生生・総科のあちこちにビラをばらまいた多少の宣伝効果もあったのかたのか、学生(学部、大学院)を中心に約四十名の参加がありました。プログラムは当委員会お目付役の宇田川教官(総科)の挨拶にはじまり、順次講演が進んで行きましたが、意外なことに質問、コメントが次々と出てきて、非常に活発な研究会になったのです。今にして思えば、当初の予想に反して、このような活発な研究会にすることができたのは、 と言ったようなことが理由としてあったように思います。もちろん、今回の院生研究会を専門家同士の真剣な研究会と同列に考えることはできないとは思いますが、私としては、本研究会を通じて、学会や研究会へ参加をする時の基本姿勢というようなものを再認識したような気がします。
 結果として、研究会は大成功で、当日行われたインターネットによる学内への研究会の様子の生中継と合わせて、VBLのもつ可能性を十分に示すことができたのではないかと思います(これで、すっかり気を良くしたのか、研究会終了後の懇親会は必要以上のすさまじい盛り上がりを見せ、解散は(プログラム通り )翌朝になるという状態でありました)。
 反省点ももちろんあります。ただし、懇親会では反省しないとまずいようなことは、とりあえずなかったはずですが、 によって宣伝不足となり、広く参加呼びかけができなかったことが、次回へ向けて の大きな教訓になりました。

写真2 写真2.VBL院生研究会の様子。












3. 今年の企画

 VBL院生夏の学校。これは広大VBLと岡山大VBLの院生による共同企画で、現在、徳島大及び山口大VBL院生にも参加を呼びかけています。内容は、中四国の大学のVBLの大学院生が合宿しながら、研究会やVBLについての討論を行おうというイベントです。VBLに今は関係ない方でも「いずれVBLで研究をしたいので、様子が知りたい。ぜひとも参加したい」という人がいれば、参加していただくくことも可能かと思いますので、ぜひ、ご一報ください。
 また、今年度も、第二回院生研究会を平成十年三月初旬に開催する予定です。今度はより広範な参加者を募るために、早く宣伝しようと思っています。興味を持たれましたら、遠慮なく連絡してください。

連絡先:matsukad@photon.hepl.hiroshima-u.ac.jp

 なお、VBL院生委員会が開催する活動ではないのですが、広大VBLに設置された最先端の実験装置を使用した演習実験を大学院生を対象に、集中講義形式で八月に行うそうです。残念ながら、今年は単位化されてはいないそうですが、VBLのホームページかポスターを見てふるってご参加下さいとのことです。
 以上、私たちVBL院生委員会とその活動の一部を紹介させていただきました。今後もいろいろな企画を実行していきますが、特に、VBL内部で閉じるようなものではなく、広島大学全体を視野に入れた活動をも行っていきたいと考えています。また、現在学部生でも、広大VBLに興味をもたれたら幸いです。

(注) 一九九六年度のVBL研究計画募集(大学院)には十二件の応募があり、七件が採択され、一件あたり約一二五万円の研究費が配分されました。採択された院生は、VBL大学院研究員に任命されました。



研究会のプログラム


13:30-13:40 挨拶(松門)
13:40-14:00 「重イオン衝突におけるタイムゼロ検出器の開発」
       高田好幸 理学研究科
14:00-14:20 「Cu (Ge 1-x Si x)O3のラマン散乱による研究」
       常住康宏 生物圏科学研究科
14:20-14:40 「Laser-Compton 散乱」
       松門宏治 理学研究科
14:40-15:00 「高エネルギー電子と結晶によるコヒーレントなX線放射」
       高嶋圭史 理学研究科
15:00-15:30 Tea Break
15:30-15:50 「3重項カルベンケイ光の磁場効果」
       秋元志美 理学研究科
15:50-16:10 「自己組織化有機超薄膜の形成と応用」
       藤本興治 工学研究科
16:10-16:30 「脂質薄膜を利用した生体模倣系材料創成システムの構築」
       瀧口宏志 生物圏科学研究科
16:30-16:50 「サイドゲートを有する
       Si埋め込み量子ドット単電子トランジスタの作製と評価」
       山口周嗣 工学研究科
16:50-17:10 「ポリエチレン伸びきり鎖単結晶の沿面成長速度の分子量依存性」
       西睦夫 生物圏科学研究科
18:00-Next Morning    懇親会
 


「チューター・指導教官が学生の命を救う−学生自殺の急増のその後」を読む

広大フォーラム29期2号 目次に戻る