ペスタロッチー教育賞表彰

子どもたちへの愛と子どもたちからの愛〜
〜黒柳徹子さん

文・ 坂越 正樹(Sakakoshi, Masaki)
教育学部助教授


 スイスの教育者H・ペスタロッチーを記念して設けられた教育賞の第七回受賞者に、女優でユニセフ親善大使として活躍されている黒柳徹子さんが選ばれ、表彰式並びに記念講演が行われた。
 表彰式は、十二月二十八日午後三時三十分から教育学部大講義室で開催され、ビデオでの同時中継が行われた別教室を含めて、学内外から七百人以上の参加者が集まった。主催者挨拶の中で原田康夫学長(ペスタロッチー教育賞実行委員長)から、十五年間のユニセフ親善大使としての活動、「戦争や貧困により栄養失調、感染症、そして孤独に苦しむ子どもたちを、文字どおり抱き上げ頬ずりして、愛と励ましのメッセージを送り続けてきた」受賞者の功績が紹介された。
 続いて行われた記念講演で黒柳さんは、テレビ画面を通して知られるとおりの歯切れのよい口調で、「トットちゃん」の舞台となったトモエ学園の小林宗作校長先生が子どもの話を何時間でも聞いてくれたこと、すべての子どもを特別扱いすることなく、いつも「いっしょにやろう」と声をかけていたことなど、教育に関わる者に常に求められる基本姿勢を、思い出として語った。
 また、ユニセフ親善大使として訪れたハイチ、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ウガンダなどの国々の子どもたちの明日の生存も保障されない悲惨な状況を、自らの実体験をとおして報告し、同時代に生きる日本の我々のなすべきことを訴えかけた。中でも、限界状況にあって病床に横たわる少女が黒柳さんに「あなたの幸せを祈ります」と話しかけたというエピソードは、大人社会によってもたらされた災難を恨むこともなく引き受ける子どもの心の存在の表れとして、参加者の大きな感動を呼んだ。
 表彰式と記念講演は、黒柳さんの多忙な公演活動の合間をぬって行われたものであったが、予定時間を超過する熱のこもったお話しで、聞く者の心にいつまでも残るものであった。
 講演後、黒柳さんも日本への移設を推進していたペニー彫刻「平和行進曲像」を中央図書館で見学し、このモニュメントが展示されるにもっともふさわしい広島大学に寄贈されたことを喜んだ。

     



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