大学の教育環境の要素で ある附属学校を守れ
─去るにあたって

 羽生 義正(はぶ よしまさ) 教育学部実験心理学講座

〈部局歴〉
昭和39・4 教育学部  
   
 


 ただただ国の財政困難のために、いま全国の国立大学附属学校の存続までが取り沙汰されています。誠に裏淋しい発想ではあります。
 わが国の教育・人材育成に対して附属学校がこれまで果たしてきた貢献の偉大さには、いくら評価しても評価し尽くせないものがあります。このことは、誰の目にも明らかなはずです。
 また将来においても、この混迷をきわめるわが国の教育問題に取り組むべき附属学校の新しい使命には、大きな期待が寄せられてしかるべきです。にもかかわらず、わが国経済界は、目先のご都合のみにとらわれて、附属学校の切り捨てを云々しているのです。
 顧みれば、天然資源に乏しいわが国の、開国以来の、とりわけ第二次世界大戦後の目覚ましい発展は、一にかかって、教育立国の政策、すなわち優れた国民教育による人材育成の成果であったといっても言い過ぎではありません。
 そしてその基礎としては、世界にもまれにみる学校教育の充実、またそれを支えてきた国立(大学附属)学校の貢献を抜きにしては考えられません。将来とも、国のおかれたこの状況は変わろうはずはありません。
 つまり、わが国は未来永劫にわたって人材育成を最優先課題に掲げていかねばなりません。もちろん、従来の附属学校のあり方に問題がなかったとは言えません。常に批判されているのはそのエリート校化ですし、大学の教育・研究からの遊離です。
 これらの批判には、附属学校自らの努力によって応え、改善すべきことは言うまでもありません。特に、教員養成計画にかぎらず、大学教育一般への協力に積極的になるべきです。
 同時に大学からも、附属学校との連携を緊密にする試みを模索することによって、自らの研究・教育環境の整備・充実を図るべきではないでしょうか。


広大附属中・高体育祭での1コマ(1998.9.15)筆者前列右側



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