「退職者」のつぶやき

 長澤 泰子(ながさわ たいこ) 学校教育学部障害児教育講座

〈部局歴〉
  昭和35・4 (民間)
    45・4 (東京都)
    47・1 (国立特殊教育総合研究所)
  平成2・4 学校教育学部  
   
 


 退職者の特集に寄稿するようにいわれ、大変困りました。広島大学に来て九年の歳月が流れたのですが、その間、私は一体何をしてきたのかと。
 たった九年間でしたが、現場の教師として巣立っていった学生が沢山います。長年、言語障害者(児)の教育やリハビリテーションに携わってきた私としては、自分の研究や臨床から得た実感として、「ことばは決して教え込むものではない」ということを言ってきました。子どもによって具体的な方法は異なりますが、いずれにしても、教えることを至上命令と考えている現場では、それを実践することが案外難しいらしく、卒業生からの相談が絶えません。最後は「悩みがあるからこそ、進歩があるのよ。悩みなさい」と言うことになってしまいます。つぶやきの一、私は悩める人間を作り出しているのか。
 教育とは、子どもたちを変えていくことです。話せなかった子どもが話せるようになることも、おかしな発音が上手な発音になっていくことも子ども側の変化です。「相手の変化を望むならば、まず自分が変化しなさい、つまり柔軟性が大切」と、これも言ってきました。ところが、私自身については、「もう年だから」とつい言い訳をしてしまいます。つぶやきの二、私は言うこととやることが違う人間か。
 三月末には東京へ帰りますが、Eメールでの通信ができるようにと、すでにコンピュータ一式を留守宅に買い整えました。卒業生や院生の希望でした。つぶやきの三、これで広島大学と縁が切れないぞ。有難いな。


コンピュータのプライベートレッスン(筆者右側)



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