変わり行く大学

 大谷 一登(おおたに かずと) 教育系学部事務部

〈部局歴〉
  昭和34・4 医学部
    36・4 広島大学分校
    39・4 教養部
    54・4 学生部学生課
    55・10 学生部厚生課
    57・4 学生部学生課
    61・4 工学部
    63・2 学生部教務課
  平成2・6 学生部留学生主幹付
    4・4 生物生産学部
    7・4 学校教育学部
    10・4 教育系学部
 
   
 


 広大フォーラムにはいろいろ書いてきましたが、これが最後の投稿になります。
 思い返せば、学生服姿が目立つ学園の中で突然に巻き起こった嵐、安保闘争が強烈な記憶として蘇ってきます。続いて大学紛争そして現在の大学改革です。
 安保闘争は大学の学問の府としてのイメージを一変し、大学が政治の中に巻き込まれていくような大きなショックを受けました。さらに東京大学に端を発した大学紛争は全国に火の手を拡げ、大学の存在そのものを揺るがすように思えました。いたるところにバリケードが築かれ、構内に入ることさえ難しい感じでした。当時電子顕微鏡を扱っていた私は、電子顕微鏡を守りたい一心で、追い出された建物の中にこっそり忍び込み、電子顕微鏡の状態を確認したものでした。日ごとに破壊されていく構内は、大学の末路を見るような思いでした。
 気持ちが沈んでいく中で「人類が初めて月に一歩を記した」というニュースは、闇の中で光を見出したような気がしました。当時の全共闘の戦士たちが、何を考えていたのか本当のところわかりませんが、大学の古い体質を破り、大学の大衆化に一石を投じたことは確かなように思います。
 しかし、高校卒業生の四〇%以上が大学に進学する今日、別の意味で大学の存在を問われる時期がきたように思います。今度は、大学の質の向上を目指した大きな改革のうねりが押し寄せてきています。国の財政の悪化とともに国立大学の独立行政法人化が叫ばれ、大学も生き残りをかけた大変な時代を迎えるものと思います。このような時期に大学を去るのは心苦しい気がしますが、多くの人材を世に送り出してきた広島大学が、改革によって、さらに飛躍し社会の要求に応えられる大学になることを期待しています。


旧東千田キャンパス総合科学部大講義室前で(筆者右端)



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