初めは美しい

 武田 誠郎(たけだ まさお) 医学部生化学第二講座

〈部局歴〉
  昭和36・4 (民間)
    43・11 (京都大学)
    44・2 (神戸大学)
    50・9 医学部
 
   
 


 私は一九七五年九月に医学部に新設された生化学第二講座の主任として、神戸大学から転任して来ました。半年分の講座費約一五〇万円のほかは何もないところからの出発でした。
 医学基礎棟にはスペースがなく、研究室は、当時廃墟と化していた被爆旧陸軍兵器庫のレンガ造りの二号館の一部を手直しして、翌年三月に出来上がりました。大きな建物の一部だけを住めるようにしたものですから、大雨になると水が入口から流れ込み、廊下伝いに教授室に迫ってきました。先住の野良猫が天井裏で子猫を生み、その一匹が壁のすき間に落ち何日もその鳴き声が聞こえたこともありました。
 八〇年、医学科の学生数が一二〇人に増え、新しい実習棟が建ち、その三階が現在の研究室となりました。
 人材の確保と研究費の調達には苦労しました。幸い、少数ながら共同研究者に恵まれ、継続して文部省科学研究費の交付も受け、さまざまな細胞内反応の制御に関与する蛋白質リン酸・脱リン酸化反応を触媒する酵素の活性調節機構を研究することができました。
 学生とは、ジャズ研究会、映画研究会、美術部、ゴルフ部の顧問として師弟の関係を越えた付き合いもありました。ゴルフ部は十年前に発足し、昨年、第二十九回関西医歯薬ゴルフ競技大会を主管し、個人及び団体で初優勝しました。写真はその時のものです。
 何はともあれ、今まで勉強を続けられたことが一番幸せです。数え切れない多くの方々の御支援、御指導、御鞭撻の賜物と深く感謝いたします。学舎としての広島大学の充実を祈って止みません。

富士三次CCの18番ホールを背に(筆者中央)



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