切除の外科から置換・再生医療への模索

 土肥 雪彦(どひ きよひこ) 医学部外科学第二講座

〈部局歴〉
  昭和35・4 (公立病院)
    41・4 医学部
    42・6 (民間病院)
    46・6 医学部附属病院
    46・9 医学部
    48・4 医学部附属病院
    49・6 医学部
 
   
 


 広島大学外科学第二講座は、初代河石九二夫教授の頃から脳、内分泌、末梢血管、胸部、消化器一般と広範な外科領域を担当してきました。私自身、脳外科を志して二代目星野列教授の門下に加えて頂いていましたが、消化器、末梢血管外科グループへの転向を契機に、ワシントン州立大学スクリブナー、マキオロ両教授のもとで、透析療法、腎移植の研修を受けることになりました。おかげで一九六七年の夏には、スターツル教授を訪問して世界初の肝移植成功例に出会えました。
 以来、三代目江崎教授の下で、腎、肝、膵などの臓器不全の外科を始めさせて頂き、血液浄化療法や移植医療に取り組みました。八五年に外科学第二講座を引き継ぐことになり、免疫応答モニタリングと免疫抑制法の整備、阻血・再灌流障害の病態解明と対策、臓器保存法・灌流液の開発、血管外科手技を応用した癌拡大手術、移植の手技を応用した体外手術、生体部分肝移植、不適合移植や異種移植への寛容導入などと手を拡げ、優秀な教室スタッフのおかげもあって、多くの成果を上げることができました。IL-10、IL-2遺伝子導入による拒絶反応制御や癌転移防止、増殖促進因子を加えた培養法による肝幹細胞増殖でも有望な実験成績を得ています。
 癌治療や移植の適応拡大、またハイブリッド人工肝臓のみならず、3D細胞外マトリックス上に肝幹細胞を増殖させ、新たに肝再構築させる道も開かれつつあります。二十一世紀には、四肢、臓器の再生も夢ではないでしょう。
 一応、夢想、深思、瞑想、高飛をモットーにしてきましたが、自分の在任期間を振り返るとどうも無精、浅思、迷走、口飛といったところでしょうか。これからの人たちは、ぜひ頑張っていただきたいものです。

第60回日本臨床外科学会会長としての講演時の様子(平成10年11月11日、広島国際会議場)



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