国際共同研究の経験

 尾田 年充(おだ としあつ) 工学部応用理化学講座

〈部局歴〉
  昭和38・4 理学部
    38・12 広島大学分校
    39・4 教養部
    45・10 理学部
    58・10 工学部
 
   
 


 今から三十年前米国に留学中、初めて国際会議に出席するためMITを訪れる機会がありました。その折、美しい芝生に囲まれた一対の高層ビルの壁面の最上部に、ニュートンとガリレオの名前が大きく刻印され、続いてダーウィンやアインシュタインなど科学史に輝く人々の名前が下段まで所狭しと刻まれているのを観て、MITの理念を象徴しているようで強い感銘を受けたのを覚えています。
 当時はまだ、一ドル三六〇円の時代、わが国は米国の後を追うのに懸命でした。ことに田舎者の私には、彼我の差が大きく感じられていましたので、今後科学技術の研究でどのように貢献するべきであるかといったことを、取り留めもなく考えていました。その後、ご承知のように、日本は飛躍的に経済を発展させ、それと共に国際協力の必要が叫ばれるようになったわけです。
 その間、十五年前、縁あってわが工学部の一員に加えていただいてから、このMITの印象が改めて甦ってきました。ぜひ工学の教育研究にできる限りの寄与をしたいと考えたものです。工学部は、キャンパス移転一番乗り(続いて来るべき他学部がなかなか腰を上げないので往生しましたが)を敢行し、大きく発展しつつある時期でもありました。
 私の研究でも、日米科学技術協力事業の一端に参加する機会に恵まれ、米国の同じ分野の研究者と共同研究をすることができました。当時米国は多くの社会的な問題を抱えており、日本では批判的な論調が目立ちましたが、米国人の中で短期間ながら生活してみて、昔と変わらぬ良い面に多く触れることができたのは、私個人にとってもう一つの経験としてよろこんでおります。
 広島大学に学生時代から四十五年間、誠にありがとうございました。

X線レーザー国際会議で



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