出会いを大切に

 村上 綾子(むらかみ あやこ) 原爆放射能医学研究所

〈部局歴〉
  昭和32・4 (民間)
    42・4 (農林省)
    44・12 原爆放射能医学研究所
 
   
 


 月並みではございますが、月日の経つのは早いもので、お蔭様で還暦・定年を迎えることになりました。これもひとえに諸先生をはじめ皆様方の御指導の賜と感謝申し上げます。原医研に就職し、爾来三十年、人生の半ば近くを研究室で過ごさせて頂きました。学問の場に身を置き、多くの貴重な出会いに恵まれましたことは、一生の宝と存じております。
 出会いの相手は「人」とは限りません。"いけばな"との出会いも、私の人生を大いに潤してくれました。
 二年前、中国五県の華道コンクールに出瓶の機会を得ました。大体の構想はまとまったものの、花は生き物ですから、作品を見て頂く瞬間に生けた花が最高の輝きを発していなくてはなりません。
 花材を求めて日も傾き、歩き疲れたとある駅の構内に、ライトに照らされた一塊の雑草が目にとまりました。ただの雑草ですが、向こうから「生けて欲しい」と訴えているように思えました。その瞬間こそが、まさに花との出会いでした。無欲で臨んだコンクールで、図らずも"家元賞"という最高の栄誉を頂くことができました。
 職を去るに当たって思いもかけぬ出会いに恵まれました。姓を改めて還暦からの新しい人生へのスタートです。
 これからも一層"出会い"を大切にして、感謝の気持と共に生きていきたいと存じております。

蓼科 ピラタスで



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