大きなフォロースルーを

 栗本 一男(くりもと かずお) 大学教育研究センター

〈部局歴〉
  昭和33・4 (京都市)
    40・4 (京都大学)
    47・8 (ユネスコ・アジア教育事務所)
    51・10 (ユネスコ本部教育局)
  平成6・4 大学教育研究センター
 
   
 


 長年勤務した国際機関を定年退官し、広島大学に迎えていただいてはや五年、二度目の停年退官となりました。ホップ、ステップが終わり、後は気侭な生活へのジャンプとなります。終の栖も神戸の中心街にアクセスがよく、ゴルフや海釣りにも何かと都合の好い六甲山系西端の丘に定めました。せいぜい外に出て日に晒され風に吹かれながら、新しい視点から社会の変化を眺め、ものごとを考えてみるつもりです。
 ライフサイクルの研究によると、半世紀前の日本人の平均寿命は五十代で、父親は末っ子の大学卒業を見ることなく死んで行くものであったとか。現在は子どもの数が減ったこともあり、子どもたちが巣立った後、十五年から二十年の生活が続きます。十五年とは、再び新しい分野の勉強を始めて専門家となり一仕事できるほどの時間でもあります。
 数学の分野では、主要な仕事ができるのは二十歳代で、三十歳を過ぎるとインパクトのある論文は書けない等と言われますが、他の分野ではそれほどでもないようなので、これは頭脳の発想回路の固定化によるもので、必ずしも年齢による脳細胞の劣化によるものではないと勝手に考えています。そうなると、灰色物質の未活用部分を活性化することで大きなジャンプが可能になる、という気楽な理屈になります。
 振り返ってみますと、ゴルフスイングに喩えれば、「他人の視点による」資料を「読む」というバックスイングが大きくなりがちで、問題を「自らの視点で」「見、考える」という、ダウンスイングからフォロースルーにかけてのスイングバランスが悪くなっていたように思います。ゆっくりした大きなフォロースルーを心がけるつもりです。


中国最南端、海南島三亜の「南天一柱」岩にて、中国の大学管理責任地方移管研究の国際セミナー(一九九六年)のコンサルタント(左からユネスコのサンヤル博士、筆者、ニューヨーク州立大学のウィンダム博士)



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