高齢化社会・少子化時代の大学

 奥田 邦男(おくだ くにお) 教育学部日本語教育学講座 

〈部局歴〉
  昭和38・2 (カリフォルニア大学)
    43・10 (オハイオ州立大学)
    46・10 (私立学校)
    50・2 教育学部 
   
 


 教育学部の移転が話題になり始めた頃、東千田キャンパスと福山キャンパスの教官の合同の懇親会を西条で開いたことがありました。その時教育学部が移転するであろう草ぼうぼうの小高い丘の上に這い登り、遥か南に工学部と生物生産学部の建物を眺望したことがあります。あれから十五年、新キャンパス統合移転後の整備も進み、『世界に誇れる』素晴しい広島大学キャンパスができつつあるのを嬉しく思います。これまで、さまざまな国で、数多くの大学を見てきた経験からの実感です。
 アメリカは移民の国なので少子化の問題は日本のように深刻ではありません。しかし、高齢化の問題は日本と同じです。私がアメリカで学んでいた『大昔』のころから、若い先生の親かと思うほどの社会人の学生たちが、たくさん単位を取りに来ていました。人生の先輩たちからいろいろなことを学んだものです。
 日本と同様、アメリカの働き盛りの団塊の世代が七十歳台に達するのは、あと二十年足らずです。最近のニューヨーク州北部のコーネル大学の新しい試みは、高齢化社会を迎える大学のあり方を先取りしたものです。大学が積極的に高齢者のための施設をキャンパス内や周辺に誘致して、多くの若い学生たちと元気な高齢者たちが、共に学び、共にスポーツの試合の応援をしたりする等、バリヤフリーの新しい大学を創る試みです。
 キャンパスで共に学び生活する中で、異なる世代の『若者たち』が、歳を重ねるという意味を感じとり、さらに健康管理、介護の方法等を学術的研究へと発展させていくのだそうです。日本の大学も日本人の学生数が減少すれば、アメリカの大学並みに社会人や留学生をどんどん受け入れて大学の活性化を図ればよいと思います。
 世代の異なる『若者たち』に負けないように、私はここ数年来、できるだけ毎日、約一時間程度、水泳・水中歩行をするように心掛けています。国内や海外への出張でも水泳用具を忘れません。


学長主催の留学生懇談会を家族で楽しむ(筆者左から2人目)



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