二つのふるさとに感謝して

 今田 滋子(いまだ しげこ) 教育学部日本語教育学講座 

〈部局歴〉
  昭和33・4 (私立学校)
  平成2・4 教育学部
   
 


 「東京生まれの東京・広島育ち」とでも申しましょうか、幼いころから二つのふるさとを行ったり来たりしました。両親の故郷への疎開を繰り返していたわけです。しかし、広大附高一年修了後に上京してからは定住し、大学院修了後は、留学などの数年間以外は、出身校の国際基督教大学(ICU)で留学生の日本語教育や日本語教師養成を担当し、使命感と喜びに支えられた日々でした。
 その流れを変えたのは、一九八九年春の宵の電話でした。それ以来、遠くて懐かしい思い出の地、広島が急に身近な現実の地となりました。そして、九〇年春の広大大学院教育学研究科の日本語教育学専攻新設に際し、約四十年ぶりに広島に戻ることになりました。
 広大での九年間も大変充実した貴重な時でした。東京での経験に加え、地域の日本語教育の必要性や可能性を実感し、ますます興味が深まりました。また、眠っていた広島方言が目覚めてきたのは、自分でも驚くほどでした。日本語教育のための広島方言と東京語の対照研究が新しい研究テーマとなりました。
 振り返ってみると、二つのふるさとに恵まれ、都会と地域の言語・文化に接する機会が与えられ、関係者のネットワークも広がり、さらに私立と国立の大学を経験できて、本当に感謝しています。ただ、今まではずっと走り続けてきたので、今後は少しゆっくり歩きながら、これから何ができるのかじっくり考えてみたいと願っています。
 退職に際し、多くの師・同僚・友人・学生諸氏や支え続けてくれた家族に心から感謝したいと思います。どうもありがとうございました。広大が改革の嵐を乗り越え、今後もますます発展しますようお祈り申し上げます。


教育学部玄関前で(筆者右から3人目)



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