学長インタビューNo.35

 広島大学における情報メディア環境の整備と情報公開 



 IT革命が推進され、本格的な情報化社会を迎えようとしている現在、広島大学においても今後、一層、情報化が進められると思われます。学長ご自身も講演や講義をなさるとき、パソコンによるプレゼンテーションは欠かせないとのことで、この方面にも深い関心をお持ちと聞いております。
 情報メディア環境と情報公開の展望や課題について、林、庄司両広報委員が学長にインタビューしました。



情報メディア環境整備の展望と課題

広報委員 最近IT革命なる言葉をよく耳にします。近い将来わが国でも本格的な情報化社会を迎えると思います。広島大学においても情報メディア整備が着々と進められている状況ですが、本学における今後の情報メディア環境の整備、特にハード面の計画や展望についてはいかがでしょうか。
学長  学生に付加価値を付けて社会に送り出すために、従来より情報リテラシーと外国語教育には重点的に力を入れています。昨年度から西図書館に六百台のコンピュータを導入したことをはじめとして、ハード面の充実に日々取り組んでいるところです。
 ご承知のように、広島大学は三つのキャンパスから成っており、各キャンパス同士の連携を深めていくことが、総合大学として今後ますます重要となります。そのために、現在活用しているテレビ会議等の利便性を更に向上させることはもちろんですが、例えば、東広島キャンパスと東千田キャンパスで双方向授業を行うこと等が必要になってきています。そのためにもキャンパス間ネットワークの拡充は今後の重要な課題です。
 これに関しては、東広島-呉-広島を結ぶ情報トライアングル構想にも参加し、積極的に活用していくことも重要になってくるでしょう。
 更に、現在のいくつかのセンターを統合した情報メディアセンター設立に向けて準備中で、この新しいセンターに情報関係の機能を集約させ、利用者の利便性の向上を図りたいと考えています。
広報委員 全学的なハード面について整備が着実に進んでいる状況は理解できましたが、各部局、ないし学部レベルではどうでしょうか。
学長  例えば、最近では、霞地区の共同利用施設として情報メディア教育研究霞センターがオープンしました。これによって、医学教育におけるメディア環境の整備が進み、外部の医療機関との連携体制も整い、成果が期待できます。また、医療情報の外部への公開等も行います。
広報委員 ネットワークやコンピュータ端末の拡充をはじめとする新しいメディアのためのハードウェアの整備が順調に進んでいる事はわかりましたが、それらの利用、つまりソフト面はどう充実させていけば良いと考えられますか。
学長  まず前提として教職員、学生全員がインターネットに接続し、その上で情報を収集し、また情報を発信できるようになって欲しいと思います。情報収集という意味では、外部からの予算を獲得するためにも、情報にいち早く反応できるようになることが不可欠です。また、学生情報のオンライン化を推進していきたいと思います。例えば、自宅のパソコンや携帯端末などから休講情報等の閲覧が可能になること、学生諸君からの書類の申請などもできるだけ簡素にして迅速に対応できる体制にするなど、さまざまな情報に学生が簡単にアクセスできる環境を目指したいと思います。


情報化の推進と大学の情報公開

広報委員 最近ではあらゆる面で情報公開が推進されようとしており、広島大学においても、今後ますます情報公開が推進されることでしょう。本学の情報公開においては、広大フォーラムや各学部の広報誌等が大きな役割を担って来たと思いますが、これからのインターネット社会を踏まえた大学の情報公開のあり方や進め方としてどのようにお考えでしょうか。
学長  情報公開はできるところからやっていきます。各委員会や評議会などは既にインターネットから閲覧可能になっているし、これからも積極的にやるべきです。また、新たに設置するシンクタンク機構を通じて現在、外に向けた広島大学内部の情報公開を推し進めているところですが、シンクタンク機構と関連して、大学情報室や大学情報サービス室の設置によって情報公開の促進をサポートする体制が整いつつあります。
 また、広報誌等を通じた外に向けた広島大学の広報活動は一定の成果をおさめていますが、これからもその努力は続けなければなりません。「広大フォーラム」はすでにホームページでも提供していますが、その他の広報誌等もインターネットを使えばより迅速に対応できるかもしれません。


情報化時代の授業は

広報委員 IT革命によって、情報の伝達方法は大きく変貌しようとしてますが、それに伴い、現在の大学の授業のあり方も見直す必要があるのではないでしょうか。
学長  その通りです。今までの講義の手法は根本的に変えるべきです。内容は良いが、プレゼンテーションの技術が足りない。現在はパソコンを使えば画像や音などを埋め込んだ教材を比較的簡単に作成できます。視覚や聴覚に訴えるような授業をすれば学生は注目し、教育効果はより高まると思います。どんな分野でもプレゼンテーションの改良の余地はあります。教官にはそのための努力を期待しています。
広報委員 コンピュータを使う授業を考えると、講義室にもネットワークの設備が必要になって来るのではないかと思いますが。
学長 近い将来そういうことも必要になって来るでしょう。


インターネット大学への対応

広報委員 最近特にアメリカで顕著なのですが、大学の講義をインターネット上で行うという試みが始まっています。中には、学位の取得まで含めたカリキュラムをインターネットを通じて行っているところもあり、社会人教育、生涯教育という意味でも大きな注目を集めています。日本でも既にいくつかの大学で同様の試みが始まっており、広島大学としても近い将来、何らかの対応が必要になって来ることが予想されます。
学長  外国を含めた各大学が講義を外部に公開することになると、高等教育のグローバル化と多様化が進むでしょう。学生が良い講義をする講師や大学を選べるようになるわけです。しかし、このままでは優秀な学生が海外に流出するのではないかという恐れがあります。そのためにも講義の質的向上が必要だし、それ以前に教官一人ひとりがIT革命をはじめとする時代の変化に柔軟に対応できなければならないと考えます。
 更に、メディア教育の重要性を広く知ってもらうためにも、FD(Faculty Development)をどんどん活用して行く。FDの中でメディア教育を啓蒙し、その活用についてじっくりと議論を深めてもらいたいと期待しています。



 本学長インタビューは、六月十九日に学長室にて行われました。
 広島大学の情報化については、これまでに広大フォーラム三十期三号(一九九八年十月発行)でも、特集されていますが、本インタビューを終え、その後の情報メディア環境整備が着実に推進されてきたこと、技術革新と情報環境発展の速さを実感しました。今後は、それらをいかに教育・研究や情報公開に活かしていくかが、構成員一人ひとりの重要な課題になると思われます。
 なお、本号では、学長インタビューで触れられた西図書館三階に整備されたマルチメディアフロアーの紹介記事が掲載されています。また、情報化の進展に伴う附属図書館の未来像についても特集として取り上げています。



林広報委員

庄司広報委員

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