自著を語る

『実解析入門−測度・積分・ソボレフ空間−』
著者/水田 義弘
(B5版,272ページ)
3,600円(本体)
1999年/培風館
 



文化としての数学
 数学は、代数、幾何、解析を三本柱とするが、現在では複雑に絡み合いながら発展している。数学の基本は抽象化である。すなわち、個々のもつ特性に惑わされるのではなく、考えている対象が共通してもつ性質を純化して取り出すことである。数学は、人類共通の財産であり文化の水準を測る「ものさし」であるということができる。

ニュートンの基本定理
 解析学は関数を微分したり積分したりすることによって私たちの身の回りに起きる現象を解析するための基本的な道具をまとめたものである。微分と積分の関係は、ニュートンによって発見され、「微分積分学の基本定理」として知られている。変化の速さは微分により、また、変化の量は積分することによって得られる。
 図形の面積を求める方法として、高校や大学初年度では、リーマン積分を学ぶ。リーマン積分では、連続関数を扱うときには便利であるが、一般の関数の積分を扱うには難がある。理論的な扱いはルベーグによる積分法が優れている。
 本書はPotential Theory in Euclidean Spaces, Gakkotosyo, 1996をもとに、学部生や大学院生が解析学全体を他の参考書に頼らないで理解できることを目的として書かれたものである。本書は、高度な抽象化によって、解析学の広範な部分を網羅している。
 したがって、解析学の入門書としてだけでなく、その全体像が短時間で理解できる専門書であって欲しいと願う。
 具体的な内容は次の通りである。
 第一章 測度
 第二章 積分
 第三章 線形汎関数
 第四章 測度の微分
 第五章 ルベーグの Lp 空間
 第六章 フーリエ変換
 第七章 ソボレフ空間
 第八章 容量
 第九章 ディリクレ問題
これらのキーワードを通じて本書の雰囲気を垣間見ることができる。


プロフィール        
(みずた よしひろ)
☆一九四七年広島県広島市生まれ
☆一九七五年広島大学大学院理学研究科 単位取得退学
☆現在:総合科学部教授、理学博士
☆専門:ポテンシャル論





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