自著を語る
『Gigitiruan Duplikasi』
インドネシア語訳/H.Soeprapto
(邦文原著・英訳/濱田 泰三)
(変型B5,171頁)
27,500ルピア(当時)
1998年/Airlangga University Press
本書は一九八六年刊「複製義歯―義歯と慣れ―」のインドネシア語版で、翻訳者はスープラプト教授である。題名のGigiは歯、tiruanは英語のfalse(偽)にあたり、合わせて義歯を意味する(英語でもfalse teethという)。Duplikasiは 複製を意味する英語のduplicateをそのまま自国語に取り入れている例である。
本の内容は、私がインドネシアで講演したり、コースで何度か紹介しているので理解されていたようで、その単行本が日本にあることを知ったスープラプト氏が翻訳を強く求めたのに応じた結果、このようになった。とはいえ、日本語から英語の翻訳はほとんどこちらで行い、それ以降を氏が担当した。海賊版との違いなどのルールをわかってもらうことからスタートした。また著作権、出版費などの実務は全て当方が解決せざるを得なかった。教科書として、大学出版局から出版することで、多くの難問をクリアできた。原書がオールカラーであるのに比べると、全く違ったイメージでの出来あがりではあるが、このような翻訳があまりない国なので、その点での意義は大きいと思う。インドネシアでは大学教官にはポイントクレジット制があり、獲得点数で昇進もきまる。たしか博士号は一五○点、論文一編は一○点などと細かくルール化されていて、教科書の出版も大きい比重であった。氏は出版半年後には教授に昇進した。一九九九年二月には出版記念のコースが盛大に開催され、多数の大学関係者の来賓のもと、一般出席者も満員で、本も当日だけで二○○冊くらい出たと聞いている。このようなこと全てが、当地では初めてであったという。一人の留学生にかかる奨学金で、どれくらい彼らが母国に還元しているかを考えるとき、沢山の人に情報伝達できる手段の一つとして翻訳は色々な意味で効率がよいと思う。
今回日本語から英語の翻訳はこちらで行い、そこからインドネシア語が先に出版され、たまたま英語版(アメリカ)があとで出版の段取りである。もし英語版が先に出版されていたら、インドネシア語版はもっと楽にできていただろう。
プロフィール
(はまだ たいぞう)
☆一九七三年大阪大学歯学部大学院修了 歯学博士
☆一九七八-一九七九年英国留学
☆一九八一年 広島大学歯学部教授
☆一九九六年 エアランガ教育勲章受賞
☆一九九九年 IADR 最優秀科学者賞受賞
広大フォーラム32期2号
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