座 談 会 

6月13日 附属図書館長室




 大学は、さまざまな分野の知識や情報を生産する場であり、過去に蓄積された知識や情報を教授し伝達・継承していく場でもあります。このような大学の中にあって、図書館の役割は非常に重要なものであることは言うまでもありません。実際、広島大学には四館(中央図書館、東図書館、西図書館、医学分館)と一室(東千田分室)から成る附属図書館があり、日々の研究教育に大いに貢献しています。
 しかしながら、近年の経済社会や科学技術の変化の中で、また、一連の大学改革の中で、大学附属図書館のあり方、その機能や役割、さらには、その未来像について議論の必要があるように思われます。
 そこで広報委員会では、特集「附属図書館の未来像を考える」を企画し、利用者である学生・院生、教職員と附属図書館員、さらに地域の図書館で働いておられる方々に集まっていただき、意見交換の場を設けました。サービスを受ける側と提供する側で意見が違ってくることもあるでしょうが、それぞれの立場から、附属図書館の未来像を率直に語り合ってもらいましょう。

座談会出席者(50音順,敬称略)

鈴木玉緒
 (法学部助教授)
妹尾好信
 (文学部助教授)
土肥善嗣
 (附属図書館情報管理課図書館専門員)
中上千鶴
 (東広島市立サンスクエア図書館主事)
中尾 敬
 (教育学部心理学科4年)
中下由紀
 (東広島市立中央図書館主事)
中島美智子
 (大学院社会科学研究科博士課程前期1年)
中村文彦
 (大学院先端物質科学研究科助手)
中山和宏
 (大学院工学研究科博士課程前期2年)
福岡正人
 (総合科学部教授)
山根 博
 (附属図書館情報サービス課電子情報係主任)
渡邊敦光
 (原爆放射能医学研究所教授)

 司会:広報委員会委員長
    成定 薫(総合科学部教授)


★成定(司会):今日は、広島大学の附属図書館がこういうふうになれば、もっと便利だし、使いやすいし、こんなふうにならないかなという、期待というか夢を、それぞれのお立場から語ってもらおうという趣旨の座談会です。先ず、学生・院生の立場から、広島大学附属図書館は学習や研究にとって使いやすいかどうかを話してください。


私費でコピーは辛い

★中尾(教育・心理四年):卒論とかやる時に、文献を探して複写をするのですが、文献が中央図書館と西図書館に重複しています。重複している文献があるのにない文献がある。文献複写を学外に注文することになりますが、私費なのでちょっと辛いところです。また、パソコン検索ではあるはずなのに実際にはない、ということがたまにあります。そういうのが気になるところです。

★中山(工学研究科M2):僕は東図書館でアルバイトをしているので、その経験から話をさせていただきます。文献複写についてですが、多くの人が生協のコピーカードを買ってコピーしているようですが、夕方五時以降になってしまうと、生協が閉まってしまって、コピーカードが買えなくなってコピーできないという不安、心配があるようです。それから、文献複写を外部に依頼する方法についても多くの人は知らないようで、しばしば質問されます。あと、返却の場合、本をどの図書館でも返せればいいのにと思います。

★成定(司会):今は西図書館で借りたら西で返す、東図書館で借りたら東で返すようになっているわけですね。

★中山(工学研究科M2):そうです。返却する時は、近くの図書館に返せればと思います。

★中島(社会科学研究科M1):私はよく西図書館を利用させていただいているのですけれども、自分がこの本が見たいというので、コンピュータで検索するのですが、多くの本が先生たちの個人研究室にあります。総合科学部の先生の場合でしたら、訪ねていって、本を借りることが可能なのですけれども、別の学部の先生の研究室の場合だと、お留守の場合があったりして、結局その本がレポートを書くまでに見れなかったということがよくあります。それが何とかならないかなと思ったりしています。


貴重書の保存と活用

★成定(司会):学生・院生諸君から、現実的な問題点について具体的な指摘がありました。この座談会では、そのような問題点についても、図書館の未来像を考えることを通じて解決できないだろうかという方向で議論を進めたいと思います。次に、教職員の立場から、附属図書館が自分の研究に本当に役立っているかどうか、問題があるとすればどうすればいいかなどについてご発言ください。

★妹尾(文学部):私は文学部で、しかも古典文学なんかをやっておりますので、かなり特殊ではあるのですが、研究に関して中央図書館を利用するということで、一番大きい問題は、貴重書の扱いということなんです。今は立派な貴重資料室ができています。江戸時代以前の版本、写本の類がたくさんありますけれども、貴重資料室の中に収められていて、非常に利用しにくい状況にあるのです。学外者と同じような手続きをとらないと、なかなか見られないのです。保存管理ということと、活用・利用ということの両方が生きるような形にするには、どうしたらいいのかという問題を一番切実に感じています。貴重な文化財ですから、学内・学外問わず、どんどん閲覧可というふうにするのも、問題がありますけれども、保存ということを第一に考えてしまうと、研究に支障があるということになります。
 そこで、これまでもマイクロフィルムで閲覧に供するということが行われていますが、今後は、電子画像というのでしょうか、デジタル撮影をして利用者に提供していただきたい。経費もかかるので、どんどんというわけにもいかないと思いますが、原本の保存と利用を両立させてもらいたいと思っています。
 それともう一つは逐次刊行物、雑誌のことですが、雑誌は三階に集められて利用しやすくはなっているのですけれども、商業雑誌に限られておりまして、各大学の紀要だとか、学会誌のようなものは、書庫の中にあります。しかも、最新号、新しい号がなかなか出てこないので、最新号やいくつかのバックナンバーはいつでも開架で手にとって見られるようにならないかと思っています。スペースとしては十分あると思うのですが。例えば、東図書館を逐次刊行物センターのような形にして、全ての雑誌・紀要の類を集中的に一つの図書館で管理するようにして、とにかくそこに行けば、あらゆる雑誌が見られるんだというような形が理想ではないかなと考えています。


図書費の節減とインターネット利用

★成定(司会):妹尾先生から具体的なご提案が出されましたが、理系のお立場ということで中村先生お願いします。

★中村(先端物質科学研究科):我々理科系の教官・学生が期待する図書館の役割は主に二つあります。それは、最新の雑誌・本から新しい情報を収集することと、雑誌のバックナンバーや本・資料を保存することです。最近、我々の間ではオンラインジャーナルを利用し研究室のコンピュータで雑誌を読む機会が増えてきました。それはインターネットの利用で研究室や自宅でも二十四時間雑誌が読めること、雑誌購入費の削減という問題から共同購入を進めているためです。そのため、そのうち図書館を全然使わなくなるのではないかという意見もあります。確かに、図書館に行く学生は少し減ってきたようです。
 しかし、オンラインジャーナルは契約を打ち切るとバックナンバーも見ることができなくなってしまいます。そこで、できるだけ多くの雑誌のバックナンバー、学位論文、電子化できないような本や実験手法やデータ等をしっかりと図書館で収集・保存していただくことを希望しています。
 また、切実な問題として、図書費の節減という問題があります。技術の発展と共に読みたい雑誌の数の増加や、オンラインジャーナル化による価格の上昇で、できるだけ効率的な雑誌購入が望まれています。雑誌は、附属図書館の予算で購入しているものと、部局の予算で購入しているものがありますが、違う部局で同じ雑誌をとっていたり、両方同時にやめてしまったとか、非常に複雑なことになっています。購読雑誌の決定機構を簡素化することで、もっと効率的な運営ができるのではないかと思っています。
 その点で図書館に中心的役割をお願いしたい。また、広島大学だけではなく、中・四国の大学、公共図書館との連携を強めていくことによって、さらに有意義な図書館にする事ができればと願っております。


分館と分室

★成定(司会):さて、広島大学には広島地区のキャンパスにも分館、分室があります。渡邊先生は医学分館をご利用なさっているということで、その立場から附属図書館への期待ないし夢を語ってください。

★渡邊(原爆放射能医学研究所教授):まず医学分館は狭いです。蔵書を置く場所がないのです。例えばうちの研究室なんかは、結構古いものがたくさんあるのですけれども、それを移管しようにも、場所がないのです。先程、中村先生もおっしゃいましたけれども、いろんな部門で重複があります。
 しかし、現状では一箇所に集中するということが不可能なのですね。場所がありませんから。学習スペースについても絶対的に不足している状態です。

★成定(司会):続いて鈴木先生の方から東千田分室利用者の立場でご発言いただけますか。

★鈴木(法学部):私自身は東千田分室をあまり利用しませんので、「東千田分室の主」のような積極的ユーザーの市後興司さん(法学部夜間主コース四年生)に話を聞いたほか、四十名ほどの学生に簡単なアンケートを配って意見を出してもらいました。その結果、大体四点ぐらいのことが分かりました。
 一点目は、やはり施設の問題からくることで、例えば狭いとかですね。勉強するスペースがそもそも少ない。それからちょっと建物が古くて、暗くて、女性なんかは入りにくい。そういう意見がたくさんありました。ただ、今度できた新しい校舎に図書室が移ると、いろいろな面で格段に良くなるだろうということを聞いていますので、ぜひその情報も知りたいところです。(本号十二ページ参照)
 二点目は蔵書の数と種類が非常に少ないという苦情がたくさん出ました。さきほど西図書館などでは重複本が多いという話でしたので、それらを東千田の図書室に移管していただくだけでもだいぶ良くなるのになあと思いました。
 三点目としては、最近、相互貸借の制度が導入され便利になったと好評なのですけれども、返却日が中央図書館の返却日になっているため、東千田でその日に返したつもりでも、学内便で三〜四日かかって、延滞したことになってしまう、それでペナルティが課されて非常に不本意であるという苦情がありました。これについては何とか御一考をお願いします。
 最後に、やはり社会人の学生がおりますので、できれば日曜日に僅かな時間でもいいから開けて欲しい、土曜日だけでも、午前中からずっと開けていただくと非常に助かるのだが、という希望がありました。以上です。


広島大学全体の動きの中で

★成定(司会):現状の問題が次々に出てきて、未来像になかなかいきませんね。福岡先生は、総合科学部の先生であると同時に附属図書館の運営委員ですが、そういう立場から、附属図書館はこういう方向を目指すべきではないかというご意見をいただけませんか。

★福岡(総合科学部):それは館長を中心として、附属図書館運営委員全員で考えるべき問題でしょう。ただ、将来的には東広島キャンパスにある三つの図書館の機能分担をやる必要があると思っています。
 しかし、そのためには、先ほどから話題になっている図書館の電子化を進めねばならないでしょう。実は私も電子図書館について勉強しているのですが、まだ具体的なイメージがつかめません。いずれにしても、お金がかかります。そのお金をどうするか。広島大学の内部でやるやり方もありますが、地域や他大学と協同してできることがあるかもしれません。話を広島大学に限れば、広島大学の予算の執行の仕方が、今年度から大きく変わりました。その中で図書館関係の予算が、どのようになるのか。非常に微妙な状況らしいと聞いています。また、情報メディアセンター構想が動こうとしているらしいのですが、その中で図書館の位置付けはどうなるのか。というわけで、広島大学全体の動きの中で、附属図書館の問題を考えていかなくてはならない。


公共図書館と附属図書館

★成定(司会):さて、今日は、地域の図書館からも来ていただいています。地域の図書館から見て、大学の附属図書館は、こういうサービスをしてもらえたらというようなご意見をお聞かせください。

★中下(東広島市立中央図書館):市立図書館なんですが、広大の図書館と相互貸借の協力の提携を結ばせていただいています。提携を結んでまだ三年ですが、市民の方から広島大学所蔵の本を借りたいという希望があった場合は、借りに行かせていただいています。
 しかし、去年で九冊、おととしは十二冊といった具合で、あまり多くはないのです。もともと希望が少ないからか、利用の難しさが原因か、よく分かりません。例えば、図書の利用の期限が二週間ですが、借り出しと返却の日数を差し引いて、お客様に実際にお貸しする期限が一週間というふうにさせてもらっているのです。しかし、「一週間では分厚い本はとても読めない」というふうに言われたこともあります。
 また、実際に借りる場合、館員が仕事が終わってから行くことが多いのですが、借りたい本が書庫にあった場合は、書庫の本は四時までということで、借りることができなかったりして、いろいろ不都合なことがあります。

★中上(東広島市立サンスクエア図書館):私はこの春からサンスクエア図書館の方で勤務しておりますので、市民の立場から一言言わせていただきたいのですけれども、市民の方々も広大の図書館が利用できるということを、知ってる方がほとんどいらっしゃらないと思うのです。その点、利用できるということを、広報に載せるなりして、知らせていただきたいと思います。

★成定(司会):結局、附属図書館をめぐる問題点の羅列ということになってしまいましたので、図書館で働いておられる方々から、多少弁明していただきましょうか。とりあえず、地域の方から出た声に、答えていただけますか。

★土肥(附属図書館情報管理課):市民のみなさんへの広報については、積極的にはしていません。東広島市の広報でなさっていただくほうが効果的ではないでしょうか。現在の相互覚書というのは、図書館が介在するようになっているんですよね。直接来館できるような形になればいいのですが。
 しかし、実際にはずいぶんたくさんの市民の方がおいでになって、利用されているんです。

★成定(司会):特別な資格がなくても、閲覧、貸し出しを認めているんですか。

★土肥(附属図書館情報管理課):やはり大学の図書館ということで、研究とか、目的をはっきりもたれている方には、便宜をはかりましょうということです。公共図書館との役割分担を意識しながら、サービスしているというのが現状です。

★成定(司会):東広島市立図書館ではコンピュータ端末で広島大学の蔵書が検索できるシステムは整っているのでしょうか。

★中下(東広島市立中央図書館):利用者が検索できる開放端末は置いてありません。職員用に事務室の中には置いてあり、職員が事務用に使用しているのみです。

★成定(司会):公共図書館もインターネット環境を早急に整備していただきたいですね。そうなると広島大学の図書館の蔵書を利用したいという希望が爆発的に増えるでしょうし、逆に大学のコンピュータ端末から市立図書館の蔵書が検索できるようになって、非常にありがたい。


電子情報化の現状と問題点

★成定(司会):議論を進めていくと、やはり電子情報化というのがキーワードになってきたと思われます。専門家の立場から、図書館の電子情報化について山根さんにご発言いただきましょう。

★山根(附属図書館情報サービス課):広島大学の図書館のホームページを経由して使える電子ジャーナルやデータベースをどんどん増やしていくというのが、大きな流れだと思います。最近は理系の分野だけではなくて、「雑誌記事索引」がオンラインでCD-ROM検索できるようになりまして、多く利用されています。
 今、私は図書館のホームページを担当しているのですが、コピーの申し込みの仕方が分かりにくいということでしたので、利用案内の部分を充実していきたいと考えています。これはお金がそんなにかからずにできることですから。

渡邊(原爆放射能医学研究所):重複雑誌が多くあるという話がでましたが、図書館に電子ジャーナルが一冊あれば、いいわけでしょう。

★土肥(附属図書館情報管理課):実は図書館もそれを考えているんです。特に外国雑誌の値段が高騰しているために、タイトル数をどんどん減らさざるを得ない。また、図書館の資料費のうち、雑誌費の割合が大きくなって普通の本が買えなくなっている。それで渡邊先生がおっしゃったように、広大全体で考えると重複しているものについては、例えばオンラインジャーナルと活字のセットで購入して、学内の人が共同で使っていく、そういう方式はどうかと、考えています。

★成定(司会):十年ぐらい先には、おそらくそうなっているでしょうね。ほとんどの雑誌がオンラインで読めるようになって、図書館がそれを管理して、皆が端末からアクセスする。多くの分野の研究雑誌はそうなってくると思うのです。現実問題としては、費用負担の問題がありますが。

★土肥(附属図書館情報管理課):もう一つ図書館の収容能力の問題があります。さっきお話が出ましたけれども、この東広島キャンパスの三館の機能分担ということで、例えばある館を雑誌センターにして、そこに全部雑誌を集中して、そこへ行けば雑誌がバックナンバーも含めて全部見られて複写もできるとかですね。試算してみたのですが、書庫の増設と雑誌や図書の移動に、億単位の金がかかるのです。今新館が建った後で、そういう莫大な金額を要求するのも、ちょっと非現実的かなと。

★成定(司会):しかし、いずれはそういう方向で、考えざるを得ないのではないでしょうか。いろんな人から話が出ましたけれども、分散しているという現状は、やっぱりいろいろ問題があるわけですから。


西図書館三階は「未来の図書館」か

★成定(司会):今の話と関係があるのですけれども、最近、西図書館の三階に情報教育研究センターと、外国語教育研究センターのコンピュータ端末がたくさん置かれまして、西図書館の三階は端末室のようになったのですが、学生諸君は使われていますか。もし利用されているのだったら、感想などを。

★中島(社会科学研究科M1):個室があるので、集中して勉強ができます。英検だとか、TOEICだとか、そういう対策もあそこで全てできるので、すごく助かっています。

★成定(司会):大学図書館も含めて、図書館というのは、本と雑誌が置いてあって、それを読みにいく、借りにいく、そういうふうなものが図書館だったのですが、西図書館の三階は、私がざっと見た限りでは本がないのですね。どこかにあるのかもしれませんが、三階には本がなくて、あるのは端末だけなんですね。もしかしたら、それが未来の図書館の姿なのかなと。

★福岡(総合科学部): 私も図書館の電子情報化というのは、今後やっていかざるを得ないと考えています。利用者である教官や学生の要望や、図書館で働いている専門家の意見を踏まえて、図書館全体で取り組むべき課題です。しかし、現在、西図書館で進んでいる事態は、少し違うのではないでしょうか。簡単にいえば、図書館自体の電子情報化構想とは無関係に、情報教育や外国語教育のための端末が置かれているわけです。
 また、近い将来、デスクトップではなくて、ノート型にしてしまって、例えば無線LANとかで自由に使えるようになると、図書館の中にデスクトップ型のパソコンを設置する必要がなくなってくるわけです。そこまで考えると、図書館という空間の有効利用の仕方も変わってくるでしょう。

★成定(司会):図書館の未来像は、コンピュータ端末がたくさん置いてあって、それを通じて電子化されたコンテンツを見るのかなと思っていましたが、今の福岡先生のお話ですと、そのような形態は早急に乗り越えられていくだろうということですね。

★福岡(総合科学部):はい、私はそう思います。PHSや携帯等を、今学生さんが、かなりの数持っていますが、近い将来、パソコンに匹敵するもっと手軽な機器が普及するようになるでしょう。もっとも、しばらくの間はノートパソコンぐらいでしょうが。いずれにせよ、どこにいても必要な時に情報を入手できるようになるわけで、図書館に行く必要はなくなるわけです。


携帯端末時代の図書館の役割

★成定(司会):その時代になると、箱としての図書館はどんな機能を持つことになるのですか。

★山根(附属図書館情報サービス課):利用者が自宅や研究室から、文献複写や本の申し込みがインターネット上でできるようになる、というぐらいまでのイメージしかないですが、そうなると図書館に行かなくてもよくなる。したがって図書館が箱として、建物として、どういうものになるのか。よく分かりませんが、たぶん参考業務が一層重要になってくるのではないでしょうか。実際に顔を向き合わせて、適切なレファレンスをする。もちろん、学生さんたちの学習スペースとしても重要でしょう。

★渡邊(原爆放射能医学研究所):先程、妹尾先生がおっしゃいました、古い貴重な本を保存するということですよね。やっぱりそれは必要だと思います。その機能は絶対に残すべきであって、それプラス電子化をどんどん進めていく。

★中村(先端物質科学研究科):私はインターネットを研究室で使うことも多いのですが、効率的に研究できるという意味で中央図書館を時々利用させてもらっています。
 確かにオンラインジャーナルは便利なのですが、画面上だけで雑誌を読む人は少ないと思います。パソコンの画面は制約が多く論文の全体を把握することが困難です。そこで、実際にはプリントアウトして、鉛筆で書き込みをし、最後にファイルするという作業をしているでしょう。実際に本や雑誌を手にとって、書いてある内容を確かめる必要は必ずあると思います。その意味で、図書館に自分のノートパソコンを持ち込んでインターネットに接続し情報検索を行い、電子化されていない本とコンピュータの両方を比べながら仕事ができたらと思っています。

★渡邊(原爆放射能医学研究所):学内にある雑誌をインターネットを通じて借りるとか複写依頼をするとかは出来ないのです。図書館に行かなければなりません。ある意味では非常に面倒くさいところが残っていますね。


デリバリー・サービスは可能か

★成定(司会):デリバリー・サービスというのですか、例えば東広島から霞にあるものを要求したら、少なくとも何日か後には届く、そういうサービスが実現すれば、ずいぶん状況が変わると思うのですが。同じことは地域の図書館とのやりとりでも、できればいいですね。そういうシステムがあればお互いに利用しあえる。

★土肥(附属図書館情報管理課):ルーチンワーク化できればいいのですが。内容は単純でも手間がかかる作業なんです。とにかく数が多いですから。

★成定(司会):急ぐ人は自分で取りにいけばいい。しかし、数日後に届けばいいという場合は、そのシステムでお願いしておく。そういうサービスが実現すると、図書館が非常に身近なものになるし、使い勝手のいいものになって、ばらばらであることに不便を感じない。むしろ全体が一つの図書館として有機的に機能することになると思うのですけれども。


こうなれば便利

★成定(司会):さて、予定の時間をオーバーしましたが、改めて最後に学生諸君から、今までの議論を踏まえて、こういうサービスを提供して欲しいというようなことをお願いします。

★中尾(教育・心理四年):電子化というのを言われていたのですけれども、現在は、検索して、図書館へ行ってコピーして、と結構時間がかかります。検索すると、同時に中身が読めるといいですね。

★土肥(附属図書館情報管理課):近年急速に電子化が進んでおり、現在でもかなりの外国雑誌がオンラインで読めます。近い将来、雑誌はオンラインでということになるかもしれません。

★中山(工学研究科M2):本について、タイトルだけではなくて、目次を見ることができれば、使える本か使えない本かというのが分かるのですが。それから、検索して、もし三百件とかバーッと出た場合、それぞれがどこにあるかが色分けされていれば、使い易くなるのではないかと思います。

★成定(司会):中島さんは、アメリカで勉強されたことがあるそうですが、アメリカの図書館の経験を踏まえて、こんなサービスがあればいいなという意見を聞かせてください。

★中島(社会科学研究科M1):アメリカと日本の図書館を比べた場合には、利用時間がアメリカの方がはるかに長くて、私が留学した所は夜の十二時まで、しかも年中無休なんです。土・日しか利用できない人もいるでしょうから、すごく便利です。夜遅くまでやることについては、いろいろ問題があるでしょうが、例えばアメリカの場合、セーフライドというサービスもありまして、送り迎えしてくれてすごく便利が良かったのです。日本でそこまで求めるのはどうかなと思いますが、皆さんが少しでも利用しやすいようになったらいいなと思います。それから資料の面ですけれども、同じ本を重複するのでなく、なるべく多くの本を入れてくださったらと思います。

★成定(司会):地域から中下さん、何か具体的なご提案のようなことがあれば。我々としては、ぜひインターネットに接続してもらって、蔵書が見れるようにしていただきたいということなんですが。

★中下(東広島市立中央図書館):広島県内の公共図書館は、まだネットで検索できるようにはなっていないのです。県立図書館もインターネット検索はできません。県内の図書館同士で、インターネットで横断検索できる様な構想が検討されているところです。

★成定(司会):附属図書館の未来像がなかなかはっきり見えてこないのが残念ですが、問題点はほぼ出尽くしたようです。
 出席者のみなさん、今日はお忙しいところ、集まっていただきまして、ありがとうございました。今後とも、広島大学附属図書館に関心をもっていただき、利用者として、ご意見をお寄せください。


中尾 敬さん
(教育学部心理学科4年)

中山和宏さん
(大学院工学研究科博士課程前期2年)

中島美智子さん
(大学院社会科学研究科博士課程前期1年)

妹尾好信さん
(文学部助教授)

中村文彦さん
(大学院先端物質科学研究科助手)

渡邊敦光さん
(原爆放射能医学研究所教授)

鈴木玉緒さん
(法学部助教授)

福岡正人さん
(総合科学部教授)

中下由紀さん
(東広島市立中央図書館主事)

中上千鶴さん
(東広島市立サンスクエア図書館主事)

土肥善嗣さん
(附属図書館情報管理課図書館専門員)

山根 博さん
(附属図書館情報サービス課電子情報係主任)

司会:広報委員会委員長
成定 薫(総合科学部教授)

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