石炭灰の未燃分低減方法及び装置
文・ 吉 田 英 人
(Yoshida, Hideto)
工学部化学工学講座教授  



 近年、火力発電所においては微粉炭火力の割合が増加している。しかしながら石炭を燃焼した場合には多量の石炭灰が副生するため、その有効利用を検討することが重要な課題である。石炭灰は球形粒子であるので、セメントに混入した場合に製品の強度、流動性及び気密性等が向上するため従来より利用されてきた。特に石炭灰の粒子径が小さく、かつ未燃炭素割合が低いとより優れた機能が生ずる。よって、石炭灰の付加価値を高める一手段として、未燃炭素分除去を目的とした場合には分級操作が有効になる。一般に石炭灰は粒径が約一〜一○○ミクロメートルと広い粒度分布をもっている。未燃炭素分は粗粉中に多く含まれ、また粗粉は内部に微小な未燃炭素分を多く含む複合粒子として構成されている。これはボイラー内で粒子が高温場を短時間で通過するため、粗大な微粉炭粒子は不完全燃焼のまま冷却されることにより生ずるものである。従来の遠心力場を利用する分級機では、内部で粒子が一部破砕されるため、一般に分級した細粉には未燃分が多く含まれる。
 そこで本特許では図1に示したように簡単な構造のルーバ分級機の利用により、分級した細粉中の未燃分が原料より約二○%低減する技術を提案している。ルーバ内では原料は上部より流入し粗粉は下部で、微粉は上部より排出される。気流と粒子の慣性力の差を利用して粒子を分離しているため、粗粉の破砕現象が少ないといえる。
 写真2は分級粉の写真であり、粗粉が比較的黒くなり細粉よりも未燃分が多いことがわかる。この技術は石炭灰の有効利用の分野で、その利用が期待されている。
発明の名称 石炭灰の未燃分低減方法及び装置
特許権者 吉田英人・中国電力(株)
特許第二七八七五五五号 平成十年六月五日



図1 ルーバ型の分級機

写真2 原料と分級した、粗粉、微粉



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