五十年史編集室だより(12)
山中高女卒業生・八木操氏の遺品



 先ごろ、広島大学の前身のひとつである私立山中高等女学校の卒業生・八木操氏の遺品が当編集室へ寄贈されました。八木氏のご遺族が、手元に残しておくよりは山中高等女学校(以下、山中高女)と縁の深い広島大学で保管してもらう方が良いとの判断で、知人で本学卒業生の矢野博史氏(広島文化短期大学助教授)を通じて寄贈されたものです。卒業証書、第三学年時の無遅刻無欠席の褒状、集合写真二枚、写真アルバム二冊、第四学年当時のノート『割烹筆記帳』など、いずれも入手の難しい資料で、例えば編集室一同、山中高女の褒状を見るのはもちろん、卒業証書を目にするのさえ初めてでした。
 山中高女の沿革については割愛しますが、八木氏の卒業した大正六(一九一七)年といえば、山中高女の創立三十周年並びに校主山中正雄氏の古希祝賀記念式典が挙行された年です。写真アルバム『卒業記念』には、これを記念して落成したばかりの記念館の眩しい姿がしっかりと残されています。
 遺品の中でとりわけ目を引くのは『割烹筆記帳』です。A5判変型のノートで、「本科第四学年ほ組 八木操」と署名があります。授業内容の筆記でしょうが、ユニークなのはこのノートの逆側が「日本歴史筆記帳」として使われていることで、むしろこちら側が表になります。おそらく途中から割烹に転用したのでしょう。ものを大切にしていた時代とはいえ、八木氏がそれを転用した時の気持ちに思いをめぐらすとつい頬がゆるみます。なぜなら両教科のノートの取り方は明らかに違うからです。
 このノート最大の特徴は割烹の授業が克明に記録されていることです。それは日本歴史にかけた情熱の数倍を傾けて記されています。料理も多彩で、「ぼらの木の芽焼」、「林檎のフリツタア」、「鍋焼菓子」など、調理方法から時には食べ方までも記されています。「これにはバタと砂糖をかけるかまたは砂糖蜜をかけてたべます熱いところをたへるのですから前から皿を暖めておいて入れます」などという記述を読んでいると垂涎を禁じ得ません。
 冗談はさておき、これらは当時の教育内容のみならず、生活文化を知り得る貴重な資料となることでしょう。
(小宮山道夫)


写真中央が八木操氏








 50年史編集室ホームページ
 http://home.hiroshima-u.ac.jp/nenshi50/

NEWS


  ■調査・研究活動■
◇川村智治郎氏(名誉教授・第3代学長)の聞取調査を実施(2/16)。◇広大に関連する雑誌記事の調査のため,ベネッセコーポレーション・旺文社・研究社を訪問(2〜3月)。◇木田宏氏(元文部事務次官)を招き第11回研究会を開催(3/29)。

  ■資料の受入■
◇土井博氏(広島工業会)より広島工業専門学校卒業証書を借用。◇谷本忠明助教授(教育)より学内刊行物等,計189点を受贈(4/6)。◇八木操氏の遺族より山中高等女学校卒業証書ほか,計9点を受贈(4/16)。

  ■対外活動■
◇京都大学大学文書館主催「大学アーカイブズに関する研究会」へ参加(3/22)。◇全国大学史資料協議会西日本部会総会・研究会へ参加(5/24)。

  ■出版情報■
『広島大学を語る−原田康夫学長退官記念誌−』を発刊しました。原田前学長が学長在任中の思い出を自らまとめられた貴重な記念誌です。また,当編集室が年1回発行しております『広島大学史紀要』第3号も発刊いたしました。ご希望の方は編集室まで。
〈連絡先〉50年始編集室 電 話 0824(24)6050  F A X 0824(24)6049

◎お知らせ◎
 広大フォーラムの紙面刷新にともない、当編集室だよりは今後は毎号掲載となって読者の皆様のお目にかかることになります。



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