Short Essay
名札つけています

文・野 村 正 人
(Nomura,Masato)
絵・尾 崎 文 代
(Ozaki,Fumiyo)
附属図書館情報サービス課




 みなさん気がついていますか。一年ぐらい前から広島大学では事務職員(教員を除く大学職員)が名札をつけています。
 首からぶら下げる人、胸のあたりにグリップで止める人といろいろですが、とにかく全員つけています。係員から、課長、部長、事務局長もつけています。
 導入のきっかけについてはいろいろと話を聞いていますが、私たちは上司から言われて名札を着用するようになりました。当初はそんなことはイヤだ、邪魔くさいという意見も聞かれましたが、とにかくスタートしました。

意外と具合がいい

 ところが、これが意外と、はまっているのです。朝出勤して名札を身につけると気持ちがシャキとします。少しも違和感はありません。導入前には嫌がっていた同僚もごく自然に着用しています。たまにつけ忘れたまま会議などに出席してしまうと落ち着きません。
 この導入の成功はどこからきたのでしょうか。ひとつは身につける方法が統一されていないことがあるのでは。首から下げるにしても、紐の長さの取り方も各自で工夫の余地があります。短めにして名札が胸の中央にくるようにする人、少し長めにして、みぞおちの前あたりにセットする人、いろいろです。紐を使わずにグリップで洋服につける人もいます。つける場所についても指定されていません。その人なりの付け方で、センスの差をつけることができます。
 導入が全学一斉でなかったのも成功要因のひとつのような気がします。今回は各学部の事情にあわせて着用が始まりました。となりの学部が始めたのに、自分のところはまだだという期間があって、あれこれ考える時間があったのでしょう。
 もっとも名札着用自体は世の中でそれほど珍しいことではなくなっています。本学でも附属病院では教員を含むすべての職員が名札をつけていますし、その事は多くの事務職員が知っていました。

事務職員である目印?

 一番の成功要因は、今回の名札の着用が事務職員に限られていることが挙げられると思います。今なら学内で名札を下げていれば、その人は大学の事務職員であるとすぐに分かります。これまでは学内で出会っても学生なのか、教員なのか知っている人にしか分からなかったのが、今は違います。これが妙な自尊心をくすぐってくれるのです。学内ですれ違いざまに挨拶をしてもらうことが増えたような気がします。名札をぶら下げていれば、自然と気も引き締まってきますし、私は大学の事務職員なのだということを主張して歩けるのです。これが実にいい。
 最近は大学に学外の方がよく来られるようになりました。キャンパスには同じような年代の人がたくさんいます。誰に声をかけていいか分からないようなときは、この名札を下げている人にまず声をかけてもらったらいいかもしれません。

 大阪教育大学附属小学校で不幸な事件が起きました。本学のキャンパスでも不審者に対する注意が必要だと言われています。
 事務職員だけでなく、教員も名札着用が言われるようになるかもしれません。そのときの名札のデザインは教員と事務職員の区別をするのでしょうか。どうなるか興味津々です。




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