地域の方々と

我らが大学、外からどんな風に見える?
 東広島キャンパスが、日頃最も身近に接している、下見と田口の二つの地区の区長さんにお話をうかがいました。

広報委員 統合移転から六年経とうとしていますが、大学や広大生への、地元の評価は、現在どうなっているのでしょう?

溝西護区長(田口地区) 総合大学が来たということは、やはりこの地に文化の種を持ってきてもらったという感じです。
 広大生は、さすがは最高学府の学生さんという感じで、品がありますね。

植田是賢区長(下見地区) 下見の町内会長さんたちの意見を聞きましたら、「若者の町」として地域が活性化したことを喜ぶ声が多いです。しかし一方で、統合移転後は地域との関わりが薄れてしまったと、嘆く声も強いです。
 広大生の評判は良いですよ。ただ、一部には交通ルールを守らない学生や、狭い道ですれちがっても会釈すらしない学生などがいて、皆、その点は気になっているようです。

広報委員 近隣の地域として、現在、大学とどのように関わっておられますか?

植田区長 教育学部の学生さんたちと下見地区の住民が、一緒に「ゆかいな土曜日」というイベント(フレンドシップ事業・本号五ページ参照)をやっています。地元にも評判が良く、全国的にも注目されているんですよ。

溝西区長 郷田(ごうた)公民館で、地元の主婦たちと広大の留学生が、それぞれお国自慢料理を持ち寄るという、食の交流会をしています。
 あまり知られていないんですが、公民館というものは集会施設として安く借りられるんです。大学の方々も活用して下さい。ときどき学生のサークルが演奏会の練習をしていますが、農道を歩いていて、そこに良い音楽が聞こえてくるだけで、私たちは豊かな気持ちになっています。
 それから私は、「自然研究会」に参加しています。これは、地元の人も大学の先生も学生さんも一緒に、月に一回程度、この周辺の野山や水辺を散策しながら、地元の自然について考えようという集まりです。
 地域と大学をつなぐ、こういう活動に、学生や教職員の皆さんもぜひ参加してお力を貸していただきたいですね。

広報委員 地域から、大学に対する今後の要望がありましたら、お聞かせ下さい。

溝西区長 一番心を痛めているのは、交通事故のことです。先日も夜中に、ドーンと音がするので道に出てみたら、学生の車の事故でした。学生の皆さんには本当に気をつけてもらいたいですね。
 ときどき学内にお邪魔すると、汚れて散らかっている印象です。自分の身の回りの環境を整え、掃除することを教育して欲しいですね。世の中に出て、現場に入ってから、学生が困らないように。
 生活哲学をしっかりと学生に伝えて、二十一世紀の未来社会の人材を輩出する大学であって欲しいと思います。

植田区長 大学への要望としては、何といっても「もっと交流を!」ということです。とくに、「じかに接してみたら、意外とみんな良い学生ばかりだった。」と、地元の方では言っていますから、学生との交流が、もっと増えればいいですね。その意味でも、ゆかた祭りをやめるべきではなかったですね。
 学生との交流のほかに、「世の中で起こった大きな出来事を専門家が解説してくださるような場」、「地域と大学との懇談会や意見交換の場」を求める要望が、地元ではあがっています。


大学は地域住民と、どう関わっている?
 今の広大は、地域に溶け込む姿勢をどのぐらい持っているでしょうか。だんだん気になりはじめました。
 すると、「東広島サロン大学」という何やら面白そうな活動が行われているようです。今回は、日下部眞一先生(総合科学部・遺伝学、非営利組織論)にお話をうかがいました。


広報委員 どんな活動が行われているのですか?

日下部 だいたい月に一回のペースで、三十人ぐらいが集まっています。テーマは様々です。広大キャンパスのゴミ問題だったり、世界一の低燃費車を制作した技術者の講演を聞いたり、山歩きをしたり、小さいコンサートを開いたり……。
 大学関係者だけでなく、周辺の研究機関の関係者や、行政マン、地域の主婦の方々、学生など、様々な立場の人々が、わいわいと楽しく意見交換をしています。市民も参加した、一種の異業種交流会のような趣です。

広報委員 市民ベースの活動の、今後の展望はいかがですか?

日下部 東広島市もまちづくりとしてはセカンドステージに入っているのですが、この二〜三年、市民のまちづくりへの心意気が鎮火してきているように感じられます。
 地域と大学のゆるやかなネットワークの中に政策提言機能をもつ組織が自発的に生まれてくることが「学園都市づくり」の喫緊の課題でしょう。ネットワーク(人、物などあらゆる資源)、参画と連携、そして政策提言の三つが、いろんな活動の重要なキーワードになります。
 サロンを介した人と人とのつながりは、着実に「学園都市の文化」に寄与し始めているのではと、期待しています。この記事を読んでくださった皆さんも、ぜひ気軽にサロンに参加してください。

* * *

 下見と田口の区長さんにお目にかかって、まず最初の驚きは、お二人ともこの『広大フォーラム』のことを全くご存じではなかったことです。大学の図書館が市民にも開放されていることや、各学部が毎年何かの公開講座を企画していることなども含め、大学の情報があまり地域には伝わっていないことを痛感しました。
 そのような中で、「自然研究会」「東広島サロン大学」のような活動が存在し、本学の関係者が少なからず関わって、地元と交流していることを確認できたのは、収穫でした。
(広報委員・鈴木玉緒)

自然研究会
 連絡先:林浩三事務局長 (0824)28―8129

東広島サロン大学
 連絡先:難波元実事務局長(sazanami@mac.potato.ne.jp
http://www.potato.ne.jp/~hirac/etcetera/salon/salon.htm



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