地方自治体は広島大学に何を期待するか

 ここでは,本学と地方自治体との関わりという視点から,広島県知事,広島市長,東広島市長からご寄稿いただきました。

広島県知事

藤田 雄山 (ふじた ゆうざん)

 これからの持続的発展可能な社会の構築には、二十世紀型社会経済システムの大変革が「待ったなし」です。大学は、その姿、理論を示すに留まらず、科学技術移転、高度人材育成等を通しての積極的な社会参画が求められています。全国の大学、とりわけ国立大学を揺るがしている「遠山プラン」、大学の構造改革なくして日本の再生と発展はないという考えも、そのような文脈の中にあると思います。
 私は、広島大学に、中四国地方の中核大学として、総合研究大学になってもらいたい。そのために、次の三つを大いに期待しています。
 第一は、世界最高水準「トップ30」に是非とも入り、地域の国公私立大学のリーダーとして、相互交流を促進するとともに、大学発の新産業創出を加速化すること
 第二に、世界に通用するプロフェッショナルの育成に向けて、当面、法科大学院の設置に全学を挙げて取り組むこと
 第三に、都市・地域の再生の核として、産学官連携、生涯学習の拠点となること、です。
 県としても、これらの実現に向けた広島大学の取り組みを、最大限支援したいと思います。

広島市長

秋葉 忠利 (あきば ただとし)

 大学院の頃、駆け出しの数学者として見た広島大学は輝いた存在でした。私の専門であるトポロジーでは、世界的に注目されるいわば「広島学派」として、世界の若い数学者が一度は行って見たいと考えていた研究センターの一つでした。その根底には、数学という学問が実はとても人間的な学問であり、その面において広島大学が優れていたという歴史があると私は信じています。現在でも数学科の評価は変わっていませんが、数学のみならず多くの分野でも業績を挙げ続ける総合大学として、同時に教育の面でも産業との連携等、社会的貢献度においても素晴らしい成果を挙げ続けていることに敬意を表したいと思います。
 国際平和文化都市を都市像に掲げる広島市は、二十一世紀には更に、自然と人間、そして人間と科学技術との和解を目指し、科学技術を真に「人間的目的」のために活用するためのモデル都市に成長したいと考えています。その一環として、アジアを中心に、若い人たちのエネルギーと創造力を生かした研究や開発、産業の育成、グローバル化する経済の中枢地の一つとしての機能を果したいと考えています。
 そのためには、新しいタイプの大学の役割が必要になります。大学を巡る環境は厳しくなってきていますが、このような時こそ、これまでのシガラミを捨てて新たな大学創りに挑戦する好機でもあります。広島市も同じような環境の中、人類的蓄積を生かして、二十一世紀に広島大学と共に羽ばたきたいと考えています。

東広島市長
上田 博之 (うえだ ひろゆき)

 本市の誕生から今日まで、都市としての成長・発展は、広島大学なくしては成し得なかったものであり、広島大学への期待は本市自らへの期待でもあります。
こうした広島大学を含め、大学を取り巻く環境は、近年、急激に変化しつつあり、国立大学の独立行政法人化や、国公私立を問わず優れた業績を挙げる大学への重点化など、自立性・特色性の確立が求められています。
こうした中、広島大学は、時代を先取りして、学生就職センターの設置、教育学部と学校教育学部の改組・再編など多くの改革に取り組んでこられました。
とりわけ、研究機能、教育機能に次ぐ大学第三の機能「サービス機能」を大学の重要な役割として位置付けられ、平成十二年七月に大学情報サービス室を立ち上げられましたことは、学園都市を目指している本市にとりましても、学術研究機能の充実につながるだけでなく、行政、教育、福祉・医療、産業振興など多様な分野で大学との連携強化が図られることと大変喜ばしく思っております。
これからも、広島大学には、これまで培われた知的資源の活用を通し、「あの広島大学のある東広島市」そして「あの東広島市にある広島大学」として、世界に向けて情報が発信され注目される、そのような学園都市の実現に向け、共になくてはならない良きパートナーとして本市の一翼を担っていただけるものと強く期待しております。



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