広島大学五十年史編集室では、編纂事業の一環として、年間三回程度の研究会を開催しています。平成十年の編集室発足以来、これまで十二回の研究会を実施しました。研究会では、年史編纂への助言を頂くために他大学より先達をお招きしたり、本学の歴史的事項に関して当事者の立場からお話を頂くために、本学退職者等をお招きしてご講演いただいております。
昨年平成十三年には、本学の発展に深く関わられた元文部事務次官、木田宏氏と井内慶次郎氏のお二人をそれぞれお招きしました。お二人はともに本学前身校のひとつ、旧制広島高等学校の出身です。文部省入省後は要職を歴任され、文部事務次官への就任は、木田氏が昭和五十一年から、井内氏が続いて昭和五十三年からのことです。
木田氏をお招きした第十一回研究会は、昨年三月二十七日に事務局会議室にて開催しました。本学が昭和四十年代に大学紛争を契機として大学の新体制を構想し、その実現に向けて改革を進めていた当時、木田氏は文部省において大学学術局長の職にあり、本学の改革の推移を見守られました。そこで「文部省からみた広島大学」と題して、本学の大学改革についてご講演いただきました。
講演の中で木田氏は、戦後の社会状況と高等教育全体の動向に対して鋭い視点から批評を加え、広島大学は数ある国立大学の一つにすぎないとの認識であったと前置きしつつも、本学の取り組んだ改革について一定の評価を下されました。とりわけ氏が最も意を用いてこられた大学教育研究センター(現・高等教育研究開発センター)や総合科学部の設立については、その理念や当時の状況について貴重なお話を伺うことができました。
井内氏をお招きした第十二回研究会は、十一月二十七日に開催しました。この日行われた第三回広島大学運営諮問会議(注)に合わせ、会場はリーガロイヤルホテル広島となりました。井内氏は附属中・高等学校の前身である広島高等師範学校附属中学校出身でもあり、本学や広島の文教施策について特に情熱を傾けてこられました。このため本学について全般的に語っていただこうと、「広島大学の思い出」と題してご講演いただきました。
井内氏本人が、広大の五十年を振り返ることが自身の自己点検評価であることに今回気づかされた、と述べるとおり、氏と本学との関係の深さがこの講演で改めて浮き彫りにされました。特に統合移転については協力を惜しまない立場にあり、種々の問題克服について当時の学長らと苦心された話は貴重な証言となりました。本省と広大との間には本音で話し合える関係が存在してきたことを強調され、今後も伝統である堅実な学風を守って様々な状況に対処されたいとの要望を述べられました。
講演の詳しい内容につきましては、近く出版を予定しています当編集室の刊行物『広島大学史紀要』第四号に掲載を予定しています。出版の時期等につきましては、今後ホームページでお知らせしますので、そちらをご覧ください。