PHOTO ESSAY - 61 -
キャンパスの生物、その祖先は

 ニワトリ 

 Gallus gallus var domesticus 



アオエリヤケイ(緑襟野鶏:インドネシアに生息)

セキショクヤケイ(赤色野鶏:東南アジアに広く生息)

セイロンヤケイ(セイロン野鶏:スリランカに生息)

ハイイロヤケイ(灰色野鶏:インドに生息)

ハイイロヤケイから採血を行い、
そのDNAからニワトリとの遺伝学的な関係を調べる。





文・写真西堀 正英
(Nishibori, Masahide)
生物生産学部畜産科学講座助手



筆者:高知県南国市オナガドリ保存会会長さん宅にて。国の特別天然記念物のオナガドリを前にして。





 皆さん、ニワトリと言えばどういった姿を連想されますか?赤いトサカ(鶏冠)と白い毛(羽毛)。卵をたくさん産んで、コケコッコー!現在ニワトリの品種は200を超え、羽の色、鶏冠や体型は多様です。キャンパス内にも研究用のニワトリが多数飼育されています。
 ニワトリは、キジ目キジ科ヤケイ属に分類され、ヤケイ属には4種類の野鶏(写真参照)が属しています。ニワトリは約5,000年〜7,000年前に東南アジアで野鶏から家禽化され、さらに改良されて、今日のニワトリが成立しました。家禽化は、食用を第一の目的としてなされたのではなく、時を告げる鳥として、あるいは闘鶏、肝臓の色で吉凶を占う「肝占い」、また農耕や狩猟の供物やその儀礼など宗教的な動機のためとされています。ニワトリ家禽化の研究は、秋篠宮文仁殿下が精力的に取り組まれ、その「生物としてのニワトリ」だけではなく「文化としての鶏」としても注目されています。筆者たちは主にニワトリの祖先を、ニワトリのDNAを解読することによって探っています。これまで30年来、インドネシアからベトナム、ラオス、バングラデッシュ、ネパールなどの野鶏や現地のニワトリ(在来鶏)の調査を行ってきました。2001年12月から2002年1月にかけてミャンマー(ビルマ)へ野鶏の調査にでかけました。ミャンマーにはニワトリの祖先種(野鶏)が今も多く住んでいました。ミャンマーの社会や環境が時代とともに変化し、それに伴い変貌した自分たちの子孫(ニワトリ)を山の中から見つめる状況に遭遇しました。
 ニワトリの祖先は空を自由に飛び、なわばりを持って自らの生活を固持してきました。それが、今日経済、文化的にこれほどまで人類に大きな貢献をすると彼(女)らは想像していたでしょうか。現在のその姿が、その祖先を想像させがたいブロイラーから、「プチコッコ(高知県で飼われている)」という名前で「おしめ」をつけた愛玩用の小さなお座敷ニワトリまで多様な変貌を遂げています。私たちはその恩恵に感謝するとともに、あらためて「ニワトリ」を生物学的に、文化人類学的に眺めてみるとおもしろいと思っています。

http://homepage2.nifty.com/nishibo/index.html



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