特集 広大における 多様性・開放性
1.入学者選抜から見る
学部入試



総合科学部
アドミッション・オフィス方式選抜(フェニックス入学制度)
 総合科学部のアドミッション・オフィス方式選抜(フェニックス入学制度)は、高齢者層(当該年度の四月一日現在満五十歳以上の者)を対象とした生涯学習型高等教育を受ける学生のための入学制度で、平成十三年度から始まり、翌年の四月には九名の方が入学され、若年層の一般学生と共に勉学に励んでおられます。

「フェニックスで学んで」

村上 省二
(平成十三年度入学)

ニューヨークでの思い出の一コマ
 フェニックス入学一期生で二年生です。フェニックス入試の恩恵を受けた一人ですが、若い時の"大学で学びたいとの熱い思い"が、今こうして現実のものとなり、早いもので、"無我夢中の一年"でした。フェニックス入試は、"高齢者にも高度な生涯学習の場"が提供されており、学習意欲があり健康であれば挑戦できるという、国立大では初めての試みだと聞いております。独学ではどうしても、マイペースになりがちですが、こうして大学で学ぶことは、広い分野の学問に触れることができ、高い教養を身につけることが出来ます。多くの授業で新しい発見と感動があるのも事実です。
 多くの点で、我々は、将来のあるこれからの若い人達とは違った視点で学習せざるを得ませんが、実社会での経験や知識を色んな面で生かすことができると思っています。お互いに良い意味での刺激と緊張感を、少しでも感じ合える事ができれば幸いです。
 広大で学んで良かったことは、優秀な素晴らしい先生方が多く、科目メニューも豊富で、有意義な講義内容に満足しております。反面、消化不良に気をつける必要があるかもしれません。
 当初の期待に反したことは、若い人達と同じ扱いで学習することを知らなかったため、入学当初はハードな思いをしたことは否めませんし、戸惑いもありました。"今こそ出発点"の気持ちを忘れずに、これからも頑張って行きたいと思っております。




経済学部
アドミッション・オフィス方式選抜(フェニックス入学制度)
 経済学部では、社会人対象のアドミッション・オフィス方式選抜の一環として、満六十歳以上の方を対象としたフェニックス入学制度を平成十三年度より実施(平成十三年度と十四年度で三人が合格)しています。社会人学生への利便性を考慮して、授業は主として夜間に広島市内の東千田キャンパスで行います。

「六十一歳の大学二年生の春」

佐藤 温彦
(平成十三年度入学)

フェニックス入学の同級生とともに(筆者左)
 私が広島大学のフェニックス入学制度を知ったのは、平成十三年三月末の定年退職を控えた前年の夏頃だったと思います。それは、インターネットで産官学連携の情報収集をしていたときの偶然のことでした。退職後の生活設計を具体的に持っていた訳ではありませんでしたが、十年前に胃を全部取り去った身体でしたので無理はせず、気ままな余生を過ごさせてもらうつもりでした。
 これまで、地域中小企業の経営支援に微力を注いできており、昨今、地域経済の活力低下が深刻化してきていることなど気になっていました。現在の日本は、あの明治維新にも匹敵する社会経済構造の変革のときであり、ライフワークとして地域中小企業をテーマに理論的な面を学びたいと入試に臨みました。
 一年次は体調もよく、家族の協力もあり精勤できました。印象に残る講義は、「現代社会と経済A」、「人間と環境」、「化学概論」、「科学技術史」など。特に、夏期休暇中の集中講義「中国・四国地区国立大学間共同授業」は他校の先生と生徒を通信衛星の回線で結び、九大学の先生から多角的な授業を受講でき、とても、有意義な講義でありました。
 二年次が始まり専門科目が増えてくるので楽しみにしているこの頃です。




法学部(夜間主コース)
社会人特別選抜
 法学部の社会人特別選抜は、センター入試の受験が不要な入学の道を作ることを意図して設けられた昭和五十六年の第二部推薦入学(募集人員十名)に始まり、五十九年に「社会人特別選抜」と名称を変更して現在に至っています。法学部が昼夜開講制に移行し、第二部が夜間主コースになってからは生涯学習に重点を置き、入試から外国語をはずし、満二十二歳以上の社会人に広く門戸を開き、現在では、定員の半分の三十五名が社会人特別選抜による入学者となっています。

「夜間主コースで得たもの」

林 美佐
(平成十一年度入学)

職場にて
 法学部夜間主コースに在学して四年目となり、入学当初は仕事と勉強の両立はできるか心配でしたが、職場の理解もあり又、社会人であるからこそ仕事に付随した内容も多く勉強していくうちにもっと勉強したいと言う気持ちにもなりました。今は司法書士を目指しています。そして、夜間主コースでは夜間主コースしか体験できない事も多く、それは、若い人からいろんな職業を持っている人等が勉強に来ている事。いろんな人と知り合え出会った事は私にとって一番大切なものとなりました。特に障害をもった人達と勉強できた事は、自分にも励みとなり、ノートテークすると言う事はそれだけ自分も予習して行かなくてはいけないし、講義も真剣に聞いて理解して書かないといけないので、大変でしたが、先生の中には、資料を配って下さったり等、障害者と一緒に講義方法や試験方法等を考えて頂いた事は良かったと思います。しかし、そうでない先生もおられたので、残念に思う事もありました。多様性、開放性を掲げる事は良い事ですが、多様性、開放性にした場合いろんな人が入学してくるわけですから、その人、その人に合った環境造りをもう少し見直すと、より良い学生生活がおくれると思います。

次のページへ


広大フォーラム34期1号 目次に戻る