特集 広大における 多様性・開放性
1.入学者選抜から見る
大学院入試



大学院文学研究科
社会人特別選抜
 文学研究科の社会人特別選抜は、多様化する二十一世紀社会のニーズに応えるために平成十一年度から始まった大学院の門戸開放策の一つです。特別選抜とはいえ、二年以上の社会経験を条件にしているほかは、受験時も入学後も一般入試と特に違いはありません。幸い毎年優秀な受験者がいて、継続的・安定的な学生の確保につながっています。

「憧れの広大地理学教室」

竹崎 嘉彦
(平成十二年度修了)

(右)実家の店頭で、筆者(左端)と両親、家族とともに

(左)『広島原爆デジタルアトラス』
 私は広島市本通にある地図専門店『中国書店』に生まれ、子供の頃から父に連れられて得意先の文学部地理学教室をよく訪れました。私にとって教室の学生は地理や地図を教えてくれる憧れのお兄ちゃんでした。明治大学で地理学を学び西中国山地の活断層について卒論をまとめて二十年後、地図屋で働く私に広島大学に入学するチャンスが訪れました。憧れのお兄ちゃんの一人である中田先生が、社会人特別選抜制度で修士課程に私を迎えて下さったのです。
 修士課程の二年間で苦労してまとめた特別課題の成果は、総合地誌研研究叢書『広島原爆デジタルアトラス』として、昨年八月に総合地誌研究資料センターの祖田亮次助手(当時)と共著で出版させていただきました。
 現在は、霞キャンパスにある「原爆放射線医科学研究所放射線システム医学研究部門放射線分子疫学研究分野」の助手に転身しています。被爆資料入手でお世話になった早川式彦先生の下、院生時代に身につけた地理情報システムを利用して被爆当時のデジタル地理情報の基盤構築に取り組んでいます。
 被爆二世である私が、被爆地広島の大学において、原爆に関する研究の機会に恵まれたことを本当に感謝しています。




大学院医歯薬学総合研究科
社会人特別選抜
 近年の生命科学・医学の目覚ましい進歩に基づく高度な医歯薬学知識と医療技術を絶えず習得するため、医学系研究科(博士課程前期)臨床薬学系専攻、歯学研究科(博士課程)では平成十一年度から、医学系研究科(博士課程後期)分子薬学系専攻・生命薬学系専攻では平成十二年度から、医学系研究科(博士課程)では平成十三年度から、出願時に職についている社会人を対象として社会人特別選抜を始めました。平成十四年四月から医学系研究科と歯学研究科が統合されたのを受けて、医歯薬学総合研究科として引き続き社会人特別選抜の実施を予定しています。

「社会人大学院雑感」

永金 幸治
(平成十三年度入学)

吉田 岡山大助教授、B.Van Meerbeek
 ルーベン大教授と
ディスカッション(筆者中央)
 母校広大に社会人大学院があることを新聞等で知って暫くのことでした。文部教官になっていた後輩から思いがけずお誘いをうけました。夜間大学院と思ってもらっていいです、もう一度研究を始めてみませんか、と。何故だか心がワクワクして受験を決めました。もちろん、仕事への影響は少ない社会人大学院だからこそです。
 私は、卒業後も研究生、医員、附属病院助手として暫く広大に在籍していました。だから不安はそれ程感じず、むしろ楽しんで講義を受け、研究に着手できました。私を覚えていてくださる教官方も多くて、昔に戻ったように喜んでいます。
 しかし、他大学出身の方は、広大のシステムをあまり理解されないままに、入学された方が多いようです。医学界ではよく用いられているはずの、インフォームドコンセントがなされていないようです。医局内での立場に戸惑いを感じた方もいるようです。また、教官にも、社会人大学院をどのように運営していくか統一された考えがなく、四年で学位取得という目標が不明確と感じました。講義も評価に値せず、授業料を払って、日々の診療を切り上げてまで聞く価値の無いと感じたものも一部ありました。
 改善されるべき事は多いと感じますが、私のような一開業医を再び研究の場に置いてくださる広大に感謝しております。多くの開業医も研究に参加し、成果が多くの患者様に還元できるようになることを願っております。




大学院教育学研究科
社会人特別選抜の中のフェニックス入学制度
 教育学研究科では、生涯学習を通じての多様で高度な自己実現を図り、自己の研鑽を研究成果としてまとめる活動を支援する目的で、六十歳以上の志願者を対象に、社会人特別選抜の中で、フェニックス入学制度による選抜を始めました。初年度にあたる平成十三年度入試では大学院四名、十四年度には二名の合格者を受け入れ、開かれた大学の実現に努めています。

「フェニックス入学について」

天野 孝三
(平成十四年度入学)

意気盛んな筆者
 フェニックス入学制度は、高年齢者にとって何よりの救いだと思います。
 私は、心から感謝をしています。
 私自身は、歩行運動、特に競歩に関して、いろいろ研究をしてきましたが、現実には、雲を掴むような状態で、目標とする処には遅々として近付くことが出来ずにいます。
 そうした時機に、広島大学大学院のフェニックス入学制度を知り、地獄に仏とは、一寸オーバーですが、喜びとともに、挑戦してみようと応募しました。
 大学院には、多士才々の先生方がいらっしゃいます。知識の宝庫なのです。この中に飛び込んで、出来る限りの知識を吸収させて頂きながら、私の研究題目を充実させ、完成させたいと望んでいます。
 高年齢者には、高年齢者なりに経験と歴史を持っていますので、一味違った研究も出来ると思います。又、若い人にも、多少参考になり、刺激にもなると思います。特に、社会通念に関しては、それなりに長けていると思いますので、何かのお役に立つでしょう。
 今回、同窓会の案内を頂きました。
 第二回までは「広島大学同窓会連合会」であったのが、今回の第三回からは「広島大学同窓会」に変わっています。又、広島大学「創立五十周年記念会館」建築募金の案内も頂きました。昨年八月に完成した学士会館と合築されるもので、完成の暁には、音楽祭・講演会・学会などに利用され、世界の一流大学としてふさわしい設備になるようです。
 十四万人といわれる同窓生が、広島大学と共に歩み、母校愛に燃える活動を展開すべきだと思います。
 「国立大学の独立行政法人化」の動きへの対応として、さらには、「世界に冠たる広島大学」を目指し、努力したいものです。




大学院社会科学研究科
フェニックス特別選抜
 社会科学研究科法律学専攻では、平成十一年度から博士課程前期の入試をコース別(研究・総合)に実施することとし、総合コースの社会人について専門科目の筆記試験の免除要件を定め、入学の間口を広げました。フェニックス入学は、さらに五十五歳以上の高齢者を対象にした社会人特別枠として平成十三年度から設けられたもので、通常の四月入学のほか、十月に入学することが可能になっています。

「目的をしっかりもって」

坂井 敬樹
(平成十二年度入学)

フェニックス入学第一期生
(筆者、前列中央の原田前学長の真後)
 フェニックス入学制度とは、前学長・原田康夫氏の発案により、平成十二年九月、全国初の試みとして、広島大におおむね六十歳以上を対象に新設された入学制度です。私はその時、法学部夜間主コースの四年に在学中でしたが応募し、合格したので学部を中途退学して、同年十月大学院に入学しました。
 私は元々理系の人間でした。研究所で実験に明け暮れた日々を過ごしたこともあります。定年退職後、広島大学の社会人特別選抜で法学部に入学。キャンプ、カラオケ、コンパ等々楽しい日々を過ごさせていただきました。我々老年者にも広く門戸を広げ、勉強する機会を与えていただける広大に感謝しております。
 大学院に入学した後は、フェニックス入学だからといって特別なことは一切なく、若い院生と全く同じ扱いです。修士論文は、「写真の著作権」について作成中です。修士論文を書くのは大変なことですが、自分が選んだテーマなのでそれほど苦にはなりません。現在、大学院生活を満喫しています。また、前々から記録に残しておこうと思っていた『市民が守った尾道の景観』を市長はじめ十人に取材し、授業の一環として、レポートにまとめることができました。これこそ大学院でなければできないことではなかろうかと思います。
 これから大学院に入ろうとする人は、目的を持って入ってきて欲しいと思います。目的が実現した時の喜びは他の何ものにも換え難いと思います。




大学院国際協力研究科
外国人留学生特別選抜
 国際協力研究科(IDEC)は、海外からの留学生にも大きく門戸を開いています。海外からIDECを直接受験する学生のために、平成六年度から外国人留学生特別選抜制度が設けられました。受験生は、成績証明書などのほかに詳細な研究計画書および語学能力証明書(TOEFL、日本語検定試験など)の提出によって審査されます。

「海外に開かれたIDEC」

潘 潔
(平成十三年度入学)

研究室にて(筆者前列右)
 最近、私が留学生だと気づいた人から、よく聞かれることがあります。「いつ日本に来ましたか?今何年生?」「去年の三月に日本へ来ました。今修士二年生です」と答えると、「来てすぐ大学院に入りましたか?すごいですね」といつもみんなは感心します。私も自分がラッキーだとつくづく感じています。外国人にとっては、大学の入学試験を受けるためにわざわざ日本へ来ることはとても難しいので、大体の留学生はまず研究生として日本へ来ます。そこで半年か一年間ぐらい勉強してから入学試験を受けます。しかし、広島大学の外国人特別選抜制度のおかげで、去年、私は中国から直接国際協力研究科を受験することができました。昨年四月から上原先生のゼミで異文化コミュニケーション論を勉強しています。
 入学式で前学長原田先生の次の言葉に感動させられました。「今までの時代は少数の統治者によって支配されていたが、これからは個人の時代になります。」確かに私は広島大学で自由な雰囲気を感じています。国際協力研究科には開発科学と教育文化の二つのコースがありますが、科学技術や政治、経済、教育、文学、文化など様々な分野において研究がされています。学生の半分以上は留学生なので、授業は日本語と英語の両方で行われています。学生の研究分野、国籍、宗教、年齢、経験などはそれぞれ違うので、コミュニケーションする時にいつも新鮮な刺激を与えてくれます。国際協力研究科に入って、私がとても良かったと思うのは二つのこと、一つは様々な授業を受けて、視野が広がったことです。もう一つはあらゆる文化を尊重することを習ったことです。


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