特集 II 企業から見た広島大学 


1.広大生を採用している企業から



企業の採用セクションから見た広島大学
文・青木 考一
( AOKI, Kohichi )
松下電器産業株式会社人事グループ採用担当課長



 私は企業の採用担当という形で、ここ数年広島大学の学生さんと接してまいりました。今回は、その中で感ずることを述べたいと思います。多分に私 見が含まれておりますが、何らかのご参考になれば幸いです。
 まずお会いする学生さんの印象ですが、理工系の方は、総じて真面目で粘り強く、何事にも努力を惜しまないというタイプが多いように感じます。実際、就職後も研究・開発職として信頼感と安定感のある仕事ぶりには定評があります。文科系の学生さんは、自らの特長・武器をしっかりと磨き上げている自立型の人材、換言すれば「一芸に秀でている」人材が多く見受けられます。とりわけ語学の習得を含めたグローバル志向の高さにはいつも感心しています。また、理工系・文科系問わずに言えることは、いわゆる愛校心が強いこと。学生の皆さんが本当に広大が好きで誇りを持っているということは特筆すべき長所だと考えます。
 今後さらに広大生の皆さんに期待したいことは、一言で言えば「脱・優等生」。少々型破りなことでも腕力とリーダーシップを発揮して周囲を巻き込んで引っ張っていく力を養成していただきたいと思います。そのためには、様々な他流試合を通じて「異質なるものと遭遇する」機会を数多く設けていくことが大学側にも求められると思います。強い愛校心(=求心力)と、どん欲に外に学ぶ意志(=遠心力)の絶妙のバランスが必要であり、それを実現できる環境が広島大学には整っていると確信しております。我々産業界もインターンシップをはじめ、産学連携の場を通じて、有為なる人材の育成に引き続き力を尽くしてまいりたいと考えております。



採用者の視点からの広島大学
文・上野 寿三
( UENO, Toshizo )
万有製薬株式会社採用担当課長



 企業採用の視点から私どもがどのような教育を受けた人材を求めているかと問われる事が多いようです。一般的にまず本分である基礎、専門学問の習得が充分なされそのベーシックな部分プラス修学を通じて得たバランス感覚、良識を持った社会人として就業の出来る人が欲しいと思います。
 広島大学から今年四月弊社に九名入社していただきました。私は広島大学は西日本の大学には無い幾つかの特徴を持っていると思います。第一番目は総合科学部が創設されている点です。今でこそ他の国立大学でも文系、理系の区別出来ない分野を研究する学部が出来つつありますが、広島大学では三十年前よりその学部が開設されております。現代の多様化する社会的・経済的変化に対応できる人材を育成しようとしてきた大学の教育姿勢は高く評価できると思います。このコンセプトは今も続いており時代のニーズに適応しようとするアクティブな大学だとの印象を受けます。このことは学問分野から就職分野に至る幅広い領域にも展開されており、就職センターが独立した部門として運営されております。私が訪問する中国・九州地区の大学にはどこにもなく、第二番目の特徴と言えます。又、主なる出身学生が九州から関西に及んでいることも特徴です。色々な地域からの学生の存在により異なった文化が集合し、広島の文化と同化して広島大学の幅の広い文化を形作っている感じがいたします。そして歴史のある西条という地域と広大なキャンパスは、学生の皆さんが学ぶ環境としは申し分のないアドバンテージを感じます。そのような特徴のある大学で育つ広島大学生は魅力ある人材として期待しております。



広島大学・広島大学生に期待すること
文・高木 廣治
( TAKAKI, Hiroji )
中国電力株式会社人材活性化室マネージャー



 社会・経済構造の変化が激しいなか、電気事業を取り巻く環境も本格的自由化競争時代を迎え、スピードを上げて変化しています。
 かかる状況下においては、従来の枠にとらわれない新しい発想が求められており、採用にあたっては、変化に柔軟に対応しながら、自ら課題を設定し、その解決に向けて果敢にチャレンジしていく社員を求めているところです。
 したがって、大学教育へは、高度化・複雑化する社会のニーズに応じた高い専門的知識の習得を基本として、幅広い視野と探求心の涵養を望むところですし、学生の皆さんには、大学の講義や演習さらには読書などを通じて、「自ら考える力」を養い、主体性・独自性を持って考え・行動できる力を身につけておいていただくことを期待しています。
 また、就職の面接のなかで、学生生活で何かに打ち込んだ人に魅力を感じます。広島大学の優れた教育研究施設と自然に恵まれたキャンパスのなかで、何に努力し、何をやってきたか、熱く語れる付加価値をつけて卒業し、社会へ出ていただきたいと思います。
 国立大学法人化の検討が進められるなかで、今後大学間の競争が激化していくことが予想され、「個性化」「多様化」がキーワードとなりそうですが、「広大カラー」と言えるブランドイメージを醸成され、優れた学生を一人でも多く社会へ送り出していくことが、存在感と競争力を持った大学であり続けることの要となるのではないか思っています。
 特に、当社は中国地方に根ざした地域密着型企業であり、地域の「知」と「文化」創造の拠点でもある広島大学からは、これからも当社の将来を担う多様な能力と輝く個性を持った方に入社していただきたいと思っていますので、大学改革の渦のなかで、広島大学が更に大きく飛躍されんことを期待しています。



主張できる広大生の養成を!
文・光田 稔
( MITSUDA, Minoru )
マツダ株式会社人事部長



 今年四月に十人の広大卒業生を迎え、現在マツダでは四百七十五人の卒業生が働いています。社員総数の二%、事務・技術系の職務では六%弱を占め、役員を初め部・課長(管理職)の任にも多く就き、当社にとって広島大学は大きな人材供給源となっています。特に技術系(開発・生産)の領域では三百五十人が活躍しており、マツダ車づくりの屋台骨を形成している集団であるといっても過言ではありません。
 当社における広大卒業生のイメージはこの技術系社員(理学部・工学部系出身者)を中心に形成されることになりますが、一言でいうと「真面目・堅実で基礎学力があり安心して仕事を任せることができる人」ということになります。しかしこれは採用面接委員からよく聞く、「成績・人物もよいが、絶対にこの人を採りたいと心が動く場面が少ない」という印象の裏返しともいえるのです。そういえば残念ながら社内には個性的で目立つ活躍をする広大卒業生は少ないような気がします。勿論個人によって異なるのですが、これらを総じて論じますと、「自己主張」「コミュニケーション」などについて学生時代に磨きをかける必要があることを示しています。
 勉強してきたことや学生時代に身につけたことをしっかり自己認識し、それを周囲に明確に伝え、時には説得できるようになって欲しいと思うのです。言い方を替えますと「プレゼンテーション能力」や「ネゴシエーション能力」を磨いて欲しいとなりますが、これはまさにビジネスで必要とされている能力の一端でもあるわけです。そしてこれはとりもなおさず私たち企業から広島大学への期待であり、ビジネス(実践)と学問の融合した環境の中で学生の養成をしていただきたいということにもなります。
 当社の車づくりの屋台骨を支える優秀な広大卒業生の中から将来個性的なリーダーが出てきて欲しいと切望していますので、それに向けた広島大学の変革と発展を一層期待する次第です。


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