新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。広島大学で学び働く私たち総勢1万4千名は、皆さんを心より歓迎いたします。とくに、学部新入生の皆さんにとって、大学生活はこれまでとはさまざまな面で異なるため、期待と不安の入り混じった心境であろうと想像します。
 そこで、4月号では新入生の皆さんのために、広島大学でこれから学び生活していく上で、少しでも参考になるような情報を提供できるような特集を組みました。広報誌「広大フォーラム」には有志の学生からなる「学生広報スタッフ」がその編集に協力してくれていますが、この特集は学生広報スタッフが新入生当時の経験を活かしながら、企画から最終的なレイアウトまでの全編集を担当しました。まずインタビューにより、学長をはじめとして大学の諸先輩や地域の公共機関の方々から、新入生のみなさんに歓迎と激励ならびに助言をいただきました。つぎに学部生に対するアンケート結果から、皆さんが広大で生活する上でわからないと感じそうな点について問答形式で答えてみました。そして、別紙としてキャンパスマップをつけました。これらを十分に活用されて、キャンパスライフにいろいろな楽しみを見つけていただけることを願っています。

 新入生の皆さんは、大学の学長なんて自分には縁のない人だと思っていませんか。その学長をより身近に感じられるように、学生広報スタッフ三名がインタビューして学長の学生時代のお話などを伺い、最後に新入生へのメッセージをいただきました。
広島大学長 牟田 泰三  

学生の頃は星空に興味があったんです。
 大学での専攻は理論物理で天文ではありませんが、星空に興味があって、仲間内で天文に興味のある連中と何人かで観測をしていました。サークルに入っていたわけではないんですが結構凝っていまして、日本天文学会にも入っていろんな活動をやっていましたよ。親に無理を言って反射望遠鏡を買ってもらってね。晴れると夜中観測して翌朝遅刻しそうになったりだとか、大学時代は、ほとんどそれをやっていたと言ってもいいかもしれないですね。ただそうは言ってもメインはもちろん勉強だったんですよ。
 その頃一緒に天文の活動をしていた仲間が、今でも日本中にいましてね、天文の活動で大学時代に出来た仲間とは、就職してからもすごく仲良くしていました。

クソ真面目だから比較的成績が良かったですよ。
 今の僕も真面目だと思うのですが、その頃はもっとクソ真面目でした。物理の勉強をしていたんですが、勉強しないと悪いというような雰囲気があって、ほとんど欠席した事はないと思います。むしろ先生が欠席して困ったことはありましたが(笑)。クソ真面目だから比較的成績が良いわけですよ。そうするとそのレベルを落とすわけにはいかないし、それをキープするためには頑張らざるを得ない。期末試験になると一生懸命やって良い点を取るというのが趣味になってしまって…。自分の学生にはそんな点取り虫は駄目だよといつも言っていたのに自分はそうだった。

親から「アルバイトをしたら勉強しなくなる」と言われて…。
 アルバイトは一切しなかったんです。親から「アルバイトをしたら勉強しなくなる、だから金は出すから勉強しろ」ということを言われて、これは親の方針だったと思います。アルバイトをしなくても勉強が出来たということは、ありがたいことだったとは思っています。でも、それが良かったのか悪かったのかは分かりませんよ。だってアルバイトをすることで、単に収入が得られるだけじゃなくて、社会を知ることもできますからね。
 僕の場合は、自宅が商売をやっていましたから、両親から商売の道とか社長学とかを学びました。そういう意味での社会勉強は随分しましたね。それが何で今、学長をやっているのかと言われると、それはまた別の機会にでも…。

勉強をやる環境については他大学に負けないと思いますね。
 僕はこのキャンパス自身は日本一だと思っているんですが、人によってはド田舎だとか安芸高原大学とか言う人がいて…。でも勉強をやる環境については他大学に負けないと思います。
 好きな場所は、景色的にはやはりぶどう池の辺りが落ち着きますね。それから、ぶどう池に流れ込んでいる小川があるでしょう。その小川を遡っていく途中、工学部に行く橋の下を過ぎた辺りからバス道路までの間は、すごく自然が残っていて、そこが僕が一番好きな場所なんですよ。理学部の植物園にもなっていて、自然が保たれ歩くのがとても楽しいですね。あんな細い小川なのに、橋の下辺りには結構大きな魚が泳いでいて、あれを”ぼやー“と見ながら歩き回っているととっても良いですよね。

皆さん、気軽に声をかけて欲しいですね。

学長の執務机にて
(左から小川さん、清水さん、丸一さん)
 僕はもうどんどん声をかけて欲しいですね。よく町を出歩きますから、皆さん見かけていると思いますよ。だけど、「あっ学長だ」とか言って知らん顔してすーっと通り過ぎているんじゃないかと思います。ただ、僕としてはいつも見られているという意識があって、何となくリラックスできないのが悩みなんですが(笑)。でも、町で僕を見かけたら、「はーい」とか言ってもらえるぐらいの気さくな雰囲気の方が良いかなと思いますので、皆さんも気軽に声をかけて欲しいと思います。

皆さんと積極的に会って話せる機会を作りたいんですよ。
 最近、ティータイムミーティングとか、ランチタイムミーティングとかいろいろと試みていまして、直接皆さんと会って話すことができて非常に有益だったと思います。でも、そうやって会える学生はトータルしても百人程度で、全体から見ればほんの一部の学生としか会っていないんですね。少しの時間でも良いから、積極的に情報交換できるような機会が作れれば良いなと思います。何か良いアイデアがあったら教えてください。

コミュニケーションマークを作りました。
 もちろん教職員も学生も使うんですよ。ただし強制ではありません。教職員には名刺に入れてくださいというお願いはしています。
 学生諸君にも強制はしませんが、例えばクラブ活動で外に出かけるときに、旗にでもマークを付けてくれたら良いかなと思います。
※詳しくは本号二十六頁をご覧ください。

「いかにも広大生だ」と思われるような実力を身に付けてほしいですね。
 広島大学カラーとは何だろうと、前から僕は気にしていて、最近よく外の人に広大ってどういうイメージですかと聞いているんですよ。外の人が持っている広大生のイメージは、要するに一口で言えば「目立たないがしっかりしている」という感じなんです。裏を返せば「地味でコツコツとやる」イメージですね。これは悪いことじゃないと思いますよ。ただ、大学ランキングの本なんかを見ると、例えば論文が何本だとか、そういう統計データでは広大の順位は一桁台に入るんですが、企業の社長や高校の先生からの評価が予想外に低くて二桁台の半ばぐらいに低迷する。これは何故だろうと僕は思っていて、それはどうも広島大学が目立たないという、ここに問題があると思うんですね。

 そこで、学生諸君へのお願いですが、謙虚で質素であまり目立たないけどしっかりしているという、この伝統は大事にしていきましょう。だけどプラス特色を出しましょう。しかも、広大生が持つその特色というか実力を、外の人から見えるようにしなきゃならない。ただ、これは学生諸君に期待し求めるというよりは、我々教育する側の責任でもあるんですね。
 それで、僕はその特色をどの辺で出していくのが良いのかなと考えているんですが、ヒロシマという名前は、被爆地として広く世界に知られていますから、その意味においては、広島大学は国際性が高いんですよ。だから、海外に行っても、ヒロシマをきっかけにすれば、人の輪の中に入っていきやすいと思いますから、是非学生諸君には、そういう利点を活かして積極的に海外の方と交流し、国際性を身につけてほしいですね。広大の協定校に行けば単位が互換できますから、是非積極的に海外に出て行って欲しいと思います。それから、広大には八百人以上の留学生がいますから、彼等とも積極的につき合って、様々な活動を一緒にしてほしいですね。

 広大在学中に、社会のニーズにあった高い学力を備えることは当然ですが、積極的に出て行く、積極的に行動するという姿勢を皆さんが持ち、人格や行動力を備えてくれたら、「いかにも広大生だ」と思われるような実力、つまり、「目立たないがしっかりしている」、「目立たないけど結構国際性がある」、「目立たないけどリーダーシップを持っている」といった実力が身に付くのではないかと思います。そうすれば、だんだんと広大生のイメージも変わるのではないかと期待し、皆さんへのメッセージとします。

〈インタビュアー〉
 小川智恵子(平成十六年三月教育学部卒業)
 清水 友梨(総合科学部二年)
 丸一 真実(総合科学部二年)


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