退職者から広大へのメッセージ




「四十有余年を振り返って」

歯学部総務課 相本 勝紀


今年度学内ボウリング大会における
歯学部団体優勝の時のスナップ



 昭和三十六年に広島大学に奉職以来、四十有余年の時が「あっ」という間に通り過ぎていきました。
 趣味で始めたソフトボールの魅力にとりつかれ、ソフトボールから離れることが出来なくて、地域でのボランティアとして活動しております。
 在職中は一貫して経理系の業務を行い、創業の楽しさ、苦しさ、説得することの難しさを経験させていただきました。
 在職中における同僚等の暖かい協力を得たことへの感謝と大過なく仕事を終えることの満足感で一杯です。これからは独立法人化に向けて、大変な作業が続くものと思います。広島大学のますますのご発展と皆様方のご健康と今後のご活躍をお祈りいたします。
【部局歴】 工業教員養成所、政経学部、理学部、経理部経理課、附属図書館、附属学校部、経理部経理課、原爆放射能医学研究所、医学部、経理部経理課、医学部、工学部、歯学部




「『広大軟膏』はいかがですか」

医学部整形外科学講座 生田 義和


看護婦さん達との懇談会
1985.2.6(筆者左から3人目)



 森戸元学長が在職時代に講演されました折、職員たる者、広島大学に奉職していることを誇りに思い、その表れとして大学のバッジを着けるべきであると話されたことがあります。私は、そのとおりであると感心し、以来常に襟章として着用してきました。特に、教授就任以来十七年間は一日として上着から外したことはなく、上着に袖を通さない日にはピンタイプの校章をネクタイに着用してきました。広大に誇りを持つと同時に、現在のような、どこにでもある理念から脱却して、特徴ある校風と、情報発信基地としての確固たる独自性を打ち出してほしいものです。特に、独立行政法人化後は、質と知性と品格が保障された広大システムソフト、広大パソコン、広大弁当、そして骨折を治すことの出来る広大軟膏など。




「広島大学での研究を閉じるにあたって想うこと」

生物生産学部応用生化学講座 池上 晉


豊潮丸での実習航海を終えて
(2001年11月2日)筆者前列中央



 一九八〇年、生物生産学部に赴任し、以前から行っていた海洋動物卵の研究を続けました。当時は福山市に校舎がありましたが、市内の仙酔島には水産実験所がありました。ここは生物相が驚くほど豊かで、よく通いました。材料動物の採集には練習船豊潮丸にも大変お世話になりました。一九八八年に西条キャンパスに移ってからは機器分析センターもよく利用させていただきました。共同利用施設は利用者の研究活動を経て成果が現れるので地味ですが、研究・教育を支える基盤だと思います。独立行政法人化したあとの広島大学も、世間の耳目を引く塔の先端に光を点ずるだけではなく、地面の下で支える基盤をしっかりと固め、じっくりと長期の研究が継続できる場でありますことを願います。




「定年まで勤められた喜び」

医学部医学科 池永 智哉子


2001.5 旅行中



 広島大学勤務四十年間、細胞診検査に携わる仕事が出来たことに感謝しています。
 細胞検査士として、特に呼吸器疾患を中心に仕事をしてきました。腫瘍の早期発見に協力でき、また誤診に繋がる検査報告をしなかったことが、私の誇りです。多くの方々の温かいご指導・ご援助を賜り、色々と勉強させて頂きました。検査方法が最新になり、IT時代になっても、細胞検査士は一つ一つの細胞を顕微鏡下でよみ、判定しなければいけません。地味な仕事ですが、診断・治療に重要な検査と考えています。
 大学の研究室では「何にでも、チャレンジしよう!」という精神を学び、色々なことに挑戦することができました。ここまでやり甲斐のある仕事が出来たことを本当に嬉しく思い、感無量です。
 最後になりましたが、皆様方のご健勝と広島大学の益々の発展を祈念しております。
【部局歴】医学部




「退職にあたって」

大学院教育学研究科 人間生活教育学講座 岩垂 芳男


研究室にて



 いつの日か、その日は来るであろう、しかし、昨日、今日のことではあるまいと、のんびり構えているうちに、そのいつの日かがやって来て、あっという間に三十八年間が過ぎ去ろうとしています。人々は無事退職おめでとうございます、と挨拶して下さるが、この頃は、それに加えて、よい時期に退職されますね、という一言が加わります。昨今のような厳しい状況に置かれている国立大学のこれからのことを考えると、いい時期に退職されますね、というのは、本音かも知れないと実感しているこの頃です。  逆境に遭遇した時にこそ、ある意味では、大学の底力を発揮できる場があるとも考えられますので、教官、事務職員、学生が一丸となって、この試練を乗り越えられ、さらに躍進されるよう祈念しております。




「大学を支える人達へのメッセージ」

総合科学部学生相談室 岩村 聰


全国学生相談研修会での基調講演、
1999年、東京国際フォーラム



 長いあいだありがとうございました。教養部以来三十八年間。卒業して広島大学に残った頃は、大学というものに畏敬の気持ちを持ち、そういう職場で働くことに誇りを感じていた気がします。
 後の約二十九年間は、学生相談室で働かせていただきました。この間、カウンセリングや「グループ」で出会った学生は、延べ約二万人。多くの青年の成長発展を見守らせてもらったと思いますし、地域や全国の学生相談活動の発展に、一役果たす機会を与えていただいたことも、感謝しています。
 その学生相談室は、いま私の退職と同時に改組されようとしています。改組の過程では、大学自治の観点から見ると、大変疑問の残る動きもありました。私は、大学の研究教育にとって、民主的運営は不可欠なものだと思います。昨今の「生き残り」をかけた改革の中とはいえ、大学が、その生命にかかわるような「民主的運営」を失わぬよう祈っています。




「広島大学の皆様へ」

医学部救急医学講座 大谷 美奈子


昭和54年に救急医療を開始して
以来、待望久しい新病棟



 平成十四年三月三十一日をもって定年退官いたします。思えば卒業以来三十数年になんなんとする年月を広島大学霞キャンパスで過ごしました。いつの時代にもその時代に即した大学特に国立大学の使命が問われます。昭和五十年代には救急医療への積極的参画が求められました。広島大学医学部附属病院も昭和五十四年から昼夜を分かたず外傷、熱傷、中毒など重症救急疾患に対応することになり、現在に至っています。
今、二十一世紀の大学像として競争的環境の中で個性が輝く大学が求められています。長い間”象牙の塔”といわれて、自己満足に陥っていたように思います。これから大学が直面することは、いままで経験したことがないだけに予測がつきません。言えることは大変な時代を迎えたということです。しかし、だからこそやりがいがあり、この難しい山に向かって力を結集することのできる幸せを肝に銘じてご活躍されんことを祈ります。




「語学力を伸ばしたい 若い諸君へ」

総合科学部ドイツ語講座 岡 忠弘


ドイツ、ミルテンベルクにて



 語学では、深く読み解き、的確に表現する読み・書きの基盤を強固にすることこそもっとも大切です。読解力と表現力、つまり思考力は外国語と母国語とでは連動していて、日本語でまずく考えたものが外国語でまともな表現を得るはずがありません。この二つはことばという一つの輪の中のものです。
 聴く、これをおろそかにすると、目が知る単語と耳が聴き取る単語の数に極端なアンバランスが生じてしまい、音としての外国語のとびかう現場から次第に足がとおのいてしまいます。各自、工夫のかぎりを尽くして自分なりのレシピをつくり、忍耐づよく、異国の音を料理するしかないでしょう。
 話す、これは訥弁でよい。内容があれば、耳を傾けてくれます。諸君の地味な精進に期待します。


広大フォーラム33期5号  目次に戻る  特集2に戻る