退職者から広大へのメッセージ




「ベンチャー・ビジネス・ラボラトリーでの教育・研究の三年間」

大学院工学研究科 機能性材料工学講座 長野 博夫


広大で行われた
アントレプレナーセミナー'99IN中国の
交流会参加のVBL教官、
スタッフ有志
(1999年11月、筆者右から2人目)



 工学部(部局化後は大学院工学研究科)教授、ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー(VBL)の施設主任の仕事が平成十一年七月一日から始まりました。第二の人生の門出であり、胸をふくらませるものがありました。あっという間に三年間は過ぎましたが、学生、博士研究員、教官、スタッフ、その他学外の大勢の人々と接触する機会が持て、フレッシュな人生経験とエキサイティングな教育・研究の場で仕事が出来ました。期待以上の充実した期間でありました。
 三年間の業務を通じて、学生諸君のベンチャービジネスへの関心が高まっているのを実感しています。また、VBLからの教官、学生によるベンチャー企業の創立、優れた特許申請等の成果もありました。
 お世話になった本学関係者およびVBLの皆様方に心から感謝を申し上げます。また、トップ30の総合研究大学の一角として広島大学の一層の発展を願っております。




「エイジズム」

医学部内科学第三講座 中村 重信





 最近、女性に対する差別をなくすために、種々の方策がとられています。しかし、年齢による差別(エイジズム)についてはあまり語られていません。定年制というのは年齢による差別と考えられます。アメリカのNational Institute of Agingの研究者が定年制はエイジズムという差別であり、平等の精神にもとるとして、連邦最高裁に提訴しました。その結果、定年制は年齢差別として撤回するようにとの判決がおりました。何年か前にこの判決を知り、私の場合も提訴するべきか否かを考えてきました。ただ、私は「後輩に道を譲って、自分のやりたいことをこれからしたい」という結論に達しました。しかし、提訴してエイジズムと戦いたいという願望も僅かに残っています。




「学生とともに三十五年」

大学院教育学研究科 健康スポーツ科学講座 西村 清巳


登山・キャンプ実習
<2001.9 隠岐島後>
(筆者前列中央)



老害のなを恣にして、ついに三十五年も広島大学に居座ってしまいました。多くの教職員のみな様方、学生のみな様方とすばらしい人間関係、すばらしい思い出をつくらせていただきました。感謝の気持ちでいっぱいです。
とくに、学生のみなさんと寝食を共にしたスポーツ実習、運動部活動は、私の人生のかけがえのない一ページを飾りました。実習は、学生たちを鍛えるための一番よい教育方法だと思います。人を育てる面でも一番効果のある方法だと思います。先生方にも学生の皆さんにも実践をとおして学び、実践をとおして人を育てることを是非実践していただきたいと思います。有難うございました。




「帰りなんいざ」

大学院教育学研究科 国語文化教育学講座 長谷川 滋成





 今から千六百年前、四十一歳の陶淵明は「帰りなんいざ」を二回繰り返し、五度目の職を辞しました。一回目は「帰りなんいざ」に「田園将に蕪れんとす」と続け、二回目は「請う交わりを息めて以て游を絶たんことを」と続けています。「田畑が荒れようとしている、なぜ帰らぬ」、「世俗との交遊を止めることにしたい」。この二つが「さあ帰ろう」の理由です。
六十三歳の今、四十一歳の陶淵明の決意に倣おうとしています。農家の長男ゆえに荒れた田畑に帰ることは厭いませんが、世俗との交遊を止めることができるか。それは広島大学への思いでもあります。




「退職を前にして」

大学院教育学研究科 音楽文化教育学講座 原田 宏司


広大公開講座でチェンバロを
ひく筆者(右から2人目)



 三十年余りも勤めていると、さまざまな想い出がありますが、広島大学に赴任して以来、何かにつけ脳裏から離れなかったことは、教育学部に所属するが故の自らの専門性への問いかけでした。いわゆる教科の内容学を研究対象とする立場上、ややもすればその領域のプロパーなテーマに興味や関心が集中しがちでしたが、相次ぐ改革の中で自らの軌道を修正したり、隣接する分野を模索する中で、結果的には二足、いや何足もの草鞋を履いて定年を迎えた感があります。そのような訳で、研究面では反省することばかり思い出されますが、その反面、授業やゼミを通して、多くのフレッシュで有能な学生たちと巡り会えたのは大変幸せでした。最後になりましたが、広島大学のますますのご発展を祈ってやみません。




「定年を迎えて」

附属学校部 日野 悳之


(筆者前列右)>



 昭和三十五年生まれの方と同じ年月広島大学にお世話になり時の流れを感じます。定年の知らせを貰った時は実感させられました。
 チャンスあり、ピンチありの展開も最終回、それも大詰めといったところです。
 想い出はつきませんけど、行く先々で頂いた皆様からの助言・励ましにより、曲がりなりにも勤め上げることができ感謝しております。定年を迎えられることを最大の喜びとし、これからの人生を日々元気で有意議に過ごしたいと思います。
 新たな目標とまでいかないまでも、疎遠がちであった地域に接することも選択肢の一つとして考えています。
 押し寄せる改革で、国立大学を取り巻く環境も様変わりしつつありますが、広島大学の更なる発展と、皆様方のご健康とご活躍をお祈りいたします。
【部局歴】 附属図書館、政経学部、原爆放射能医学研究所、工学部、総合科学部、医学部附属病院、施設部企画課、歯学部、附属学校部




「感性を研ぎ澄ませて臨んだ職場」

工学部機械システム工学専攻 廣田 秀徳


装置内をアルゴンで充たし、
450℃(最大1800℃)に加熱しながら
引張り強さを調べる。



 長い間お世話になった広島大学を定年退職する時がきました。
 良き上司・同輩に恵まれたお陰で、感性を研ぎ澄ませて仕事に臨めたことに感謝しています。本物を見る、本物に会う、ということは大切なことです。
 写真は材料複合工学の依頼で、ほんの一部を担わせて頂いた雰囲気制御高温引張試験装置です。おそらく神と対話するくらい微妙な現象に左右されるだろうことを思うとき、計画・実行されたご一同の心意気に感じたものです。教官・事務官・技官・学生諸氏・留学生諸氏など、機会のあった皆様に、至らぬ者でしたが衷心お礼申し上げます。皆様と広島大学のご発展を祈念します。
【部局歴】 工学部




「世界の雄を!」

大学院先端物質科学研究科 物質基礎科学講座 藤田 敏三


LT18京都(筆者右)



 広島大学はいま、研究でも教育でも、平均的水準の底上げに終止符を打ち、「中国地方の雄」ではなく、「世界の雄」を選択的に育てていけるかどうかが問われています。頭を冷やして考える必要があるようです。語呂合せのようですが、ものを冷やせばものの本性がよく見え、新しい世界が開けることがあります。低温物理学は、まさにそれを拠り所としています。
 今夏、低温分野で最大の国際会議(LT23)が広島で開催の予定で、その準備に携わっています。広島大学にとってもチャンスです。是非支援をお願いします。写真は、十五年前に京都で開かれた会議(LT18)で、スタンフォード大のBeasley教授とともに超伝導特別セッションの座長を務めた若かりし筆者です。


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