附属学校園は今



 広島大学は,幼稚園,小学校,中学校,高等学校を合わせ合計11の附属学校園を擁しており,その数をはじめ,子どもたちの数,教員数においても,全国有数の規模を誇っています。
 本号では,附属学校園の特色を紹介し,附属教官や児童・生徒の声,保護者や地域からの声,また各界で活躍中の附属学校園卒業生からのエール,さらに大学や地域からの要望などを取り上げました。それぞれの地区・校園からの原稿で構成しています。



附属学校の役割と課題
附属学校部長 間 田 泰 弘

 本学の附属学校は、県内五地区に十一校園が分散していますが、それらは附属学校部としてまとまり、それぞれ社会に多大の貢献をしてきたことは周知のことです。
 一方では、本学における附属学校の意義と役割、独立行政法人化後の組織・運営等の検討課題もあります。また、教育学部の近くに幼稚園しか設置されていないために日々の連携が必要な実践研究が推進しにくいという問題も残っています。
 これらの課題を解決するための検討が進められていますが、今後の附属学校園に期待される重要な役割としては、附属学校としてできる共同研究にあると思われます。
 本学の各学校園は組織の面で多様な研究が可能な環境にあります。また、幼稚園から高等学校までのみならず、教育学部を初めとした様々な専門性をもった十学部と共同研究が可能な組織にあります。これらの特徴を生かしてさらなる社会的貢献ができることを期待しています。

   





福山地区

 附属福山中・高等学校は、一九五○年に福山市緑町に創立され、一九六二年に中高一貫教育の実践を始め、一九七三年に福山市春日町に移転しました。一九九九年に創立五十周年記念行事を行い、新たな発展へ向かっています。当校は、中高一貫教育で運営され、教職員も生徒も中高一体で「自由な校風 ゆとりのある学校」を目指し教育を行い研究を進めています。
 今年度は、「総合的な学習」研究会を創設しました。原田康夫広島大学長に顧問を、指導委員会に委員長角屋重樹先生をはじめ広島大学の各学部の先生方に委員を委嘱しました。大学と附属学校の連携による中・高等学校の「総合的な学習」のカリキュラム開発を進めています。

 



三原地区

 附属三原幼稚園・小学校・中学校は、一九一一年に小学校、一九一三年に幼稚園、一九四七年に中学校が創設されました。完全連絡入学制で、子どもたちは、三歳児から中学三年生までの十二年間を過ごします。本校園は、早い時期から、全国に先がけて幼小中一貫教育にとりくみ、高い評価を受けています。
 今年度は、「総合学習」「道徳教育」「特別活動」「表現活動」を基軸として、各教科・保育の幼小中一貫教育カリキュラム開発にとりくんでおり、教育学部、生物生産学部の先生方との共同研究も大きな成果を上げています。
 本校園は、特に感性教育・情操教育に重点を置き、豊かな心・やさしさ・しなやかさを追求しています。

 



翠 地 区

 附属小学校は、明治三十八年に広島高等師範学校の附属として開校し、本年九十五周年を迎えました。戦後は「広島大学教育学部附属小学校」、現在は「広島大学附属小学校」と称しています。各学年二学級、合計十二学級で四百七十二名の児童と三十二名の教職員で構成されています。教育実習、大学への教育研究協力や共同研究等を行うとともに、本校独自の研究を深め、「研究紀要」並びに月刊教育誌『学校教育』の刊行、二○○○名を超える参加者を得ての公開研究会、全国各地からの学校訪問者の受け入れ等を行っています。

 附属中・高等学校は、明治三十八年四月十七日、広島高等師範学校の附属中学校として開校しました。現在、中学校各学年三学級、高等学校各学年五学級の合計二十四学級で在籍生徒数約九百六十名、教官五十八名で構成されています。
 本校の使命として、次の二項が挙げられています。
(一)本校は、学校教育法に基づく中学校及び全日制普通科の高等学校ですが、広島大学の附属学校としてわが国の中等教育に関する実験的研究を行い、研究校としての使命をもっています。
(二)大学学生の教育実習の指導を担当する教育実習校としての使命をもっています。

 



東雲地区

 附属東雲小・中学校は、小学校は明治八年に広島県公立師範学校附属小学校として、中学校は昭和二十二年に広島師範学校男子部附属中学校として創立され、今日までそれぞれ百二十五年、五十三年の歩みを続けてきました。
 本校は、附属学校の使命である教育研究及び教育実習を精力的にこなしています。特に本校は、障害児学級、複式学級を有している唯一の附属学校として、二十一世紀を担う人間教育や個性を生かす教育に、小中一体となって力を注いでいます。
 本地区には、平成七年まで学校教育学部が隣接していましたが、学部移転後は、大学教官と連携した先駆的・実験的な研究や教育実習の指導に支障をきたしてきています。
 平成十年に広島大学評議会で決定されたように東広島市に早期に移転を行い、養護学校高等部、高等学校を増設して、子どもたちを目の前にした全学部との共同研究を行っていくことを願っています。

 



東広島地区

 附属幼稚園は、昭和四十一年、広島大学教育学部幼年教育研究施設の研究園として創設され、平成二年、教育学部の移転に伴って東広島市に園舎を新築し移転してきました。こんなところに幼稚園があったの? とご存じない方も多いようですが、ちょうど、大学キャンパスと鏡山公園との中間にあるブールバール沿いのかわいい三角屋根の建物が附属幼稚園です。「豊かな自然の中で、自由な遊びと生活を通して、幼児一人一人の個性をのびやかに育てる」ことを教育目標とし、園舎の周りに広がる探検の山、探検の森、草すべりの坂、さらには大学の農場や生態実験園などの恵まれた自然環境を生かし、幼児と自然とのかかわりを大切にした保育実践や研究に取り組んでいます。

 


広島大学附属学校に期待するもの
広島県教育委員会理事 佐 藤   勝



 附属学校は,「広島大学の教育力」を最大限に活用し,教育研究と実践に取り組む学校であり,県内の教育関係者はもとより,全国から期待されている学校だと思っています。
 私も,教諭時代には,1〜2年に1回は,附属学校の研究会に参加し,確かな理論に裏付けされた教育実践のすばらしさを学びました。
 21世紀を目前にして,国においては,新教育課程の定着へ向けた取組みと同時に,教育改革国民会議で今後の教育のあり方について新たな審議がなされています。
 広島県では,昨年「義務教育改革ビジョン」を策定し,高校教育を含めた教育改革に力を注いでいるところです。
 これら一連の教育改革では,「子どもたちに生きる力を育てること」「学校を開かれたものにすること」「学校,家庭,地域が一体となった教育の実現」が強く求められています。
 また,新教育課程については,今年度から移行措置がとられており,各学校では,21世紀を展望した教育の創造に向け様々な取組みを始めています。
 附属学校においても,新教育課程における「総合的な学習の時間」や「選択教科」のあり方はもとより,幼・小・中・高における教育の一貫性,学校評議員,学校の自己評価制度,地域の人材の協力など,新たな視点での研究・実践が深められていると聞いています。
 現在,広島大学と県教育委員会との連携した取組みも進んでおりますので,これからも一層附属学校から県内の各学校へ情報を発信され,広島県の教育に「新たな風」を吹き込んでいただくことを期待しています。

   





広大フォーラム32期3号 目次に戻る