追いつけ追い越せの時代は、お手本を見ながら技術を磨き、フロントランナーに出来るだけ近づいていけば良かったのですが、一旦自分がフロントランナーになってしまうと、同じやり方ではトップを維持できないのは明らかです。では、どうすればいいのでしょうか。
これまでのように、単に技術を高度に磨いて優れた工業製品を生み出すだけではもう駄目なのです。そんなものは、優れた技術を持った後続ランナー達に、直ぐに真似られてしまいます。真似の出来ないものを生み出す必要があります。そのためには、技術に知恵を加えねばなりません。独創性が要求されているのです。日本がフロントランナーとして果たすべき役割はここにあると思います。大学で行われている独創的な研究の成果が、工業技術の革新に活かされるべきです。大学の知的文化が、日本の技術を質的に変えることが出来るはずです。
ここまで、主として工業技術を例にとって話を進めてきました。しかし、以上に述べた状況は、工業技術のみではなく、どんな分野でも見られることです。商業でも、医療でも、芸術でも、スポーツでも、学術研究でも同様です。優れた技術に新たな知を結びつけて、国際的な舞台で活躍している沢山の日本人が生まれています。本学で学んだ皆さんも、大学の知的文化を活かして、グローバル化の中で中心的な役割を果たしてほしいと思うのです。
広島大学の卒業生・修了生の皆さんが、新たなる知を社会に持ち込み、将来の日本のリーダーとして活躍してくれることを期待しています。